南東北駅そば巡りツアー

  青春18切符が1日分余っていた。ちょうどパソコンが壊れて仕事が手につかない状態だったので、パパッと駅そば巡りの旅に出ることにした。
  1日分しかないので、時間を有効に使わないと、あまり遠くまで辿り着くことができなくなる。そこで、午前4時前に家を出て、夜明けの気配すらない池袋駅へ向かう。04:26発の山手線。ここから、小さな旅が始まる。
  こちら、池袋駅の山手線ホーム。完全に余談なのだが、池袋駅のホームにはベンチが一切ないということに今気づいた。ラッシュ時には、ベンチがあると邪魔になるかもしれないけど、ガラガラに空いていて次の電車まで時間があるようなときには、手持ちぶさたならぬ足持ちぶさたになっていけない。折り畳み式のベンチか何か、設置できないものかな。
  上野で常磐線に乗り継いで、いわきへやってきた。上野からいわきまでノンストップで移動すると、それなりに疲れる。しかも、この時間には通勤・通学客が多くて、水戸から先は車内も混んでいたから、なおのこと。
  でも、いわき駅ホームで駅そば「TASTY KIOSK」を発見すると、疲れよりも空腹感の方が強く実感するようになった。
  この写真は、価格表の一部。「たぬき(天玉) 50円」と書かれている。「月見(生卵)」の隣に書かれていることからして、意図するところは「たぬき=天玉」ということなのだろうが、これは明らかに間違いではないか。普通、「天玉」とは「天ぷら+玉子」のことを指す。「天かす」と「揚げ玉」がゴッチャになっちゃったのかな。
  それはともかく、今日の1杯目。いわき駅の天ぷらそばでございます。どこにでもあるような駅そばの味で、これといった特徴はなかったのだけど、旅先で啜る駅そばというのはなぜか美味い。それがホーム上であれば、なおのこと美味い。
  同じく、いわき「TASTY KIOSK」の看板。これも実はちょっと変わっている。普通、KIOSK駅そばの看板には、「TASTY」の下に「KIOSK」と表記されるもの。よ〜く目を凝らすと、薄く「KIOSK」の文字が見える(写真ではほとんど分からないだろう)のだが、ということは、敢えて「KIOSK」の文字を消したということでもある。
  余談だが、「TASTY KIOSK」のシンボルでもあるこのマーク、箸に麺が3本かかっているのだが、左端の麺が切れている。芸が細かいというか何というか……。
  岩沼で東北本線に合流し、仙台のひと駅手前、長町駅で降りる。というのは、この駅には駅そばがあるということを、以前に車窓から眺めて知っていたからである。
  降りてみると意外なほど駅舎は小さくて驚いたのだが、駅そば「こばやし」は健在だった。昼時だったということもあり、店内は結構賑わっていた。
  しかし、様子が変だ。現在(2006/9/7)使用されている地平線路の隣に立派な高架線路が平行している。最初、新幹線かと思ったのだが、新幹線は長町には止まらない(駅がない)。ということは、結論はただ一つ。線路の切り替えである。
  私が訪れたちょうど10日後に、東北本線は高架線路に切り替えられる。旧長町駅舎は100年に及ぶ使命を終え、解体される。同時に、駅そば「こばやし」も閉店となる。新駅舎に移ってくれればいいのだが、どうやら長町から撤退するらしい。
  初食にして食べ納めになる、「こばやし」の肉そば。肉に甘い味がついているので、つゆ全体が少し甘い印象になる。これが肉そばの長所であり、短所でもある。
  「こばやし」は長町から撤退してしまうわけだが、仙台駅ホームの店舗はこれからも頑張ってくれるだろう。そういえば、仙台の「こばやし」でも肉そばを食べたような記憶がある。普段あまり食べないメニューなのだが、何か私を突き動かしたのだろうか。
  ここから先は時間との相談。可能な限り北へ向かうのだが、小牛田に駅そばがなかったことを以て、これ以上の北上は諦めた。一ノ関まで行けば駅そばがあることを知っているのだが、そこまで頑張ってしまうと帰りがきつくなる。
  小牛田にも、かつては駅そばがあったはずなのだが、その後撤退してしまったようである。よく分からないが、売店と棟続きになったこの建物が残骸なのだろうか。あまりそれっぽくはないような気がするが。
  帰り道、車窓から紺の暖簾が見えたような気がして松山町駅で一度降りるが、駅前のラーメン店だった。紛らわしい。ラーメン屋の暖簾は赤にしてほしいものだ。
  で、とっぷりと陽も暮れてしまったので、これが最後。南東北の一大交通ジャンクション・郡山駅。この駅の在来線は3本ものホームがあるのだが、2軒の駅そばは同じホームにある。意地の張り合いとしか思えないような状態になっている。
  こちらは、駅弁屋「福豆屋」が営む駅そば。昔ながらの懐かしい佇まい。
  変わったメニューがあればそれにしようと思っていたのだが、特になかったので、素直に天ぷらそばを注文。真っ白なネギが鮮やかですね。上記の2店は、いずれも葉に近い部分が入っていたから青みがかっていたのですが、これぞ根深ネギ、という感じです。そばそのものは、ありふれた普通のものでした。
  「福豆屋」から30mほど離れているでしょうか。まさに「お隣さん」という感じで、「こけし亭」がある。こちらの方が、改札へ続く高架通路の階段に近いので、人が多い。「福豆屋」は地下通路の階段から近いのだが、メインの通路は高架の方なので、立地の上ではこちらの方が形勢有利か。そこそこ賑わっています。
  ここでは、年に1回くらいしか食べない「いか天そば」を注文。丼に収まりきらないくらい大きないか天、豪快ですね。もっちりとした食感の麺、やや濃いめのつゆ、東北らしいさが出ています。個人的には、「福豆屋」よりもこちらの方が好みに合っているかな。
  さすがに1日で4杯食べたので、宇都宮で乗り継ぐときに見かけた「野州そば」はスルーしました。以前に食べたことがある店だし……。
  それにしても、すごい賑わいよう。この時間(21時過ぎ)、売店などはすべて閉まっているから、腹を満たせる唯一の手段が駅そばというわけなんですね。これだけ客が入っていると、「この店はまだしばらくは安泰だな」と、安心してしまいます。それくらい、全国で閉店ラッシュが巻き起こっているので。


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