風雲告急再取材ツアーT

  壊れたパソコンは必ず直ると思っていたのだが、どうやら再起不能ということになりそうだ。1ヶ月間仕事を止めて待ち続けていたのだが、ただ待っているだけというわけにもいかなくなってきた。ひとまず、締切の決まっている仕事だけはなんとか間に合わせないといけない。
  そこで、寸暇を割いて既食店の再取材に出ることにした。車で深夜に東京を発ち、碓氷峠の麓の定番・おぎのやドライブインで朝を迎えたところから、忙しい一日が始まる。
  まずは横川駅「おぎのや」から。万が一パソコンが直った場合のことを考えて、前回とは異なるメニュー「天玉そば」を注文した。同じメニューの写真が2枚になるより、異なるメニューの写真が1枚ずつあった方がいいからね。
  ここの天玉そば、卵の白身が微妙に凝固している。これは、つゆを注ぐ前に玉子を乗せ、玉子の上からつゆをゆっくりと注ぐため。食べ進める過程で玉子が崩れないように、という配慮からだろうか。
  この店は朝9時開店だが、8時半にお邪魔して、無理を言って1人分だけつゆを分けて沸かしてもらった。この場を借りて、御礼申し上げます。
  こちら、「おぎのや」店先のベンチ。この店は基本的には立食いカウンターのみの露出店なのだが、ここに座って食べることもできる。木の香漂うベンチは、座っているだけでも心安らぐものだが、そこで食べるそばはまた格別である。雨よけがついているから、雨の日でも安心だ。トイレの隣なので、どことなく落ち着かない部分もあるのだが……。
  国道18号→17号と走り、水上から関越自動車道に乗る。時間に余裕があれば下を走ろうと思っていたのだが、ちょっと危険なムードになってきたから、やむを得まい。三国峠は下を走ると時間がかかるから、峠の部分だけ高速で快速通過する。
  この写真は、関越トンネルの南側入口。高速に信号があるということが、妙に不自然に感じる。
  トンネルを抜けてすぐ、土樽PAでトイレ休憩。だだっ広い駐車場は、見事に貸し切りだった。皆、トンネル南側の谷川岳PAを利用するようである。土樽はトイレしかないマニアックなPAだから、わざわざ寄る人などいないのだ。もともとこのPAの役割は、冬場のチェーン着脱所だからね。
  JR飯山線と北越急行ほくほく線のターミナル・十日町駅。今日新潟県まで足を延ばしたのは、他でもない、この十日町駅の駅そばを是非記事にしたいからだった。そして、高速を使ってでも早く着きたかった理由は、十日町の駅そば「雪中庵」は営業時間が11:30〜13:30だから。つまり1日2時間しかやっていない「幻の店」なのである。13:30に間に合わせる、これだけを考えて高速に乗ったわけだ。おかげで、13時ちょい前に到着することができた。
  し、しかし……!
  皮肉にも、「雪中庵」の照明は落とされ、窓口は閉ざされ、食券販売機にはカバーがかぶせられていた。今日は、休みか。前回の実食はGWのまっただ中だったから、土日はやっているだろうと踏んでいたのだが(この日は日曜)。
  うぅむ、困った。高速代払ってガソリン余計に使ってここまで来たのに、再取材できないとは。
  このまま帰るのはあまりにも癪なので、未踏駅を探査して回るのだが、駅そばを発見するには至らなかった。
  写真は、JR上越線と北越急行ほくほく線のターミナル・六日町駅。十日町に負けず劣らず立派な駅舎なのだが、駅構内には駅そばどころか喫茶店の一軒すら入っていない。最近改築された駅には、このような「外見だけ立派」なタイプが多い。
  かくなる上は、既食の越後湯沢を再取材するほかない。越後湯沢には、十日町と同名の「雪中庵」が入っている。同名でありながら内容はかなり異なるのだが、越後湯沢もレベルは高い。加えて、舞茸天の舞茸は地元新潟産のものを使っているという情報を得ていたので、これなら記事にできるだろうと考えた。
  ところで、駅構内の「ぽんしゅ館」の入口に立っているこの人形、見るたびに「寒いなぁ〜」と思うのは私だけだろうか。
  これが、件の舞茸天そば。こうやって写真で見ると「舞茸、小さいな」と思うかもしれないが、体積はかなり大きい。株のまま豪快に揚げているわけだ。ボリュームはすごいです。味も非常によい。体積の割に衣が少ないから、油がきつくなく、舞茸そのものの味が生きている。口に入れづらいという欠点もあることはあるのだが、食べやすくかき揚げ状にするよりも、このままの方がいいと思う。
  帰り道。ただ既食店の再取材だけで終わったのではつまらないので、前橋駅に寄って駅そばを探すことにした。転んでただ起き上がるのは凡人がやること。私は、転んでもただでは起き上がらない。
  県庁所在地駅だから車を止めにくいかなと思っていたが、そこは支線上の駅(両毛線)。意外と駅前は閑散としている。そして、改札を出て右前に、KIOSK母体の「上州うどんそば」を発見した。
  ここで食べた月見そば、とてつもなく「普通」な一杯だった。今回再取材したのはいずれも記事にしたいお気に入り店だったわけで、どうしてもレベルの差を感じてしまう。上の越後湯沢「雪中庵」の写真と見比べれば、どちらの完成度が高いか、食べなくても分かるでしょう? ちょっと辛辣な言い方をすると、前橋のはおもちゃみたいというか、ショーケースの中にありそうな感じというか。
  それでも、私は希代の駅そば好き。すべての駅そばが私の好物だ。忙しかった一日をねぎらうには、十分な満足感を得られたのだった。


戻ります。