河内迎春年越しツアー(前編)

  池袋駅、午前4時半。ほぼ始発の山手線で、今回の旅がスタートします。御用納めも済んだ12月29日だというのに、車内にはそれなりに人がいる。帰省する者あり、飲んで朝帰りの者あり、青春18きっぷで一人旅を楽しむ者あり。いろいろな人を乗せた列車だけど、まさか「駅そば巡り」をしようとしているのは私ぐらいのものだろうなぁ。
  品川で東海道線に乗り換え、一路西へ。出発時間が早すぎたこともあって、小田原「小竹林」、沼津「桃中軒」はいずれも開店前。グーグー鳴る腹をなだめつつ豊橋まで我慢の旅路。というわけで、今回の1杯目は豊橋「壺屋」の天ぷらそば(390円)。「壺屋」というと、去年の大晦日に鷲津・豊川の両駅で連食しているのですが、その時よりも値段が10円上がっていました。それでも、「壺屋」名物の油揚げ(きざみ)がトッピングされていて、「ご当地」を実感できる一杯でした。
  続いて、2杯目。名鉄の知立「刈谷麺粉」と金山「金山庵」の写真を撮った(以前に撮ってあるのだが、その後PCトラブルで消えてしまったので)ついでに、名鉄名古屋駅で「さぬき家」に入ります。店名から知れるように、この店はうどんがメイン。システムもセルフうどん特有のスタイルです。つまり、「トッピング後指定型で、有人レジで支払い」というヤツですね。
  ここで食べたのは、月見そば(360円)。天かすがたくさん入っていますが、これは無料で入れ放題です。ネギも入れ放題。嬉しいですね。うどんメインながらそばの味も悪くなく、つゆも最後の一滴まで美味しくいただけました。
  名古屋でJRに戻ります。名古屋周辺には、「駅そば」ならぬ「駅きしめん」の店が結構あります。こういった店では、そばや普通のうどんは扱っていません。きしめん専門です。こういう店を当サイトでどう扱うか(対象外とするかどうか)悩むところですね。今のところは対象外と考えていますが、そのうち扱うようになるかもしれません。なにしろ私は「ご当地モノ」が大好きなので。
  大垣を出た辺りで雲行きが怪しくなり、関ヶ原を越えると雪が降り始めました。瞬く間に積もり、米原に着く頃にはこの有様。車での旅だと「げげーっ!」と思うところですが、鉄道旅行ではこれもある種の「楽しみ」ですね。ダイヤさえ乱れなければ、の話ですけど。
  さて、3杯目です。明石駅で降り、山陽電鉄側に回ってみたら、改札横の狭い通路上に、隠れるように「山陽そば」がありました。喜び勇んで入店し、「ぼっかけそば」を注文します(380円)。「ぼっかけ」というのは、神戸でお馴染みの牛すじ肉を煮込んだ料理。これも「ご当地モノ」です。本音を言うと、もう少しボリューム感のあるメニューなのかなと思っていた部分もあるのですが、味覚的には上々でした。ちなみにこの店、安いです。かけは190円で、具一品系は260円が中心。
  店の外で、こんな貼り紙が目に入って足を止めました。何が面白いって、「駅そばで年越しそば売ってるのかよ!」ということと、「1食200円かよ!」ということ(安すぎる!)と、「関西人も年越しそば食うのかよ!」ということ。まさか「年越しうどん」だと思っていたわけではないけど、なんとなくそばのイメージがない地域だから、意外に思ったわけです。ちなみに首都圏では、駅そばで「年越しそば」を販売している店が結構あり、それほど珍しくはありません。
  JRに戻るのですが、明石駅改札内コンコースにあった「きん安」が閉店していました。8月に食べて、帰ってすぐに写真がボツになって、撮り直そうと思っていたのに。まさかわずか4ヶ月の間に消えてしまうなんて。代わりに、関西で頻繁に見かけるチェーン店「麺家」ができていましたので、関西名物の「きざみそば」をいただきます(310円)。このチェーンは比較的美味いと思うんだけど、個人的に「きん安」のたこ天そばファンだった(といっても、1回しか食べてないけど)だっただけに、残念な気持ちの方が強いですね。
  岡山駅前のカプセルホテルで一泊し、12/30を迎えます。カプセルホテル、大阪の「アルデバラン」で慣れているだけに、他のところで泊まると値段が高く感じます。また、食堂とかリラックスルームみたいなのがあるのですが、かえって落ち着かない。純粋に「風呂に入って寝るだけの施設」としてのカプセルの方が、私には向いていると思います。要するに、カプセルは健康ランドとは一線を画すものだということですね。
  今日の1杯目にして、通算5杯目。宮島口駅「CTS」にて、天ぷらそば320円。この辺りで「天ぷら」というと、まず間違いなく具の入っていない(小エビ程度は入っている)「たぬきの集合体」が出てきます。東京人がこのことを知らないで注文するとがっかりするのですが、私はむしろこれも「駅そばならではの食べ物」と、歓迎します。おばちゃんの「じゃけぇ弁」と併せて、旅を実感するひとときを演出してくれるのです。
  ちなみに宮島口駅は、宮島観光の拠点です。観光客の利用が多いのは言うまでもないことで、駅そばもある程度観光客に照準を合わせて営業しています。広島名物を冠した「穴子そば」などは、まさにその代表例でしょう。穴子とそばつゆ(うどんだし)、合うのかな……? 他に「かきそば」もあります(600円)。こちらはそばつゆにも合いそうな気がしますね。
  岩国・宇部と写真債撮影を済ませ、下関に到着しました。一応、ここが今回の旅のUターン地点となります。九州にも写真再撮影したい店が何軒かあるのですが、それはまた次の機会にということで。
  ところで、下関駅改札外の駅そば店前に、どでかいフグのハリボテが吊されていました。ちょうど駅そば店をバックに写真を撮れる位置だったので、嬉しくてついシャッターを切りました。下関らしい一枚、だと思いません?
  改札外の店舗では以前に食べたことがあるので、今回はホームの店舗で食べます。同じ駅弁業者「下関駅弁」が運営する店ですね。規模の小さい店なのですが、テレビ番組に登場したこともあって人気が高く、看板メニューの「ふく天そば」(450円)は売り切れていました。仕方なく、「かやくそば」にスイッチします(350円)。こちらもなかなか。きざみ・卵焼き・椎茸がトッピングされ、豪華です。これが最安メニューというのが信じられません。そして、この業者はつゆが特に美味い。透明度の高いつゆで、出汁がよく効いています。おかわりが欲しくなる。
  続いて、新幹線の接続がある新山口駅で今日3杯目(通算7杯目)。「味彩」のわかめそばです(340円)。つい全国どこにでもあるメニューにしてしまったのですが、今にして思えば下関で売り切れていた「ふく天そば」にしておけばよかった……。下関が有名だけにここの「ふく天」は二番煎じっぽい印象が拭えないけど、ワカメにするくらいだったら……ね。硬質な食感の麺はなかなか美味かったのですが、ちょっと後悔を残してしまいました。
  そんなこんなで一日が終わり、宿泊。今日は坂駅前の健康ランド「シーレ」に泊まろうと思っていたのですが、諸般の事情で入れなくなってしまったので、隣接しているネットカフェ「JUNK BOX」に朝までいることにしました。一応、四方をパテーションで覆われたブースになっているので、プライバシーは保たれます。でも、椅子がフラットにならないので、「熟睡」することはできませんでした。朝までひたすら漫画を読み、ネットで「大日本記外伝」を見て(^^; 過ごしました。でも、風呂に入れない&熟睡できないのに、料金的には「シーレ」とあまり変わらないというのは、ちょっと納得できない部分。ネットカフェって、使い方(あるいは店の料金システム)によっては非常に高くつきますな。
  いよいよ大晦日です。明け方にかなり冷え込んだようで、土が露出している部分にはことごとく霜が降りていました(写真はJR高屋敷駅付近)。昨夜「シーレ」に入れないと分かったとき、一瞬「駅寝しようかな」とも考えたのですが、思いとどまって正解でした。こんな日に駅寝したら、凍死することうけあいです。
  JR山陽本線で東へ戻りつつ駅そばを探します。しかしなかなか未食店と出会えず、倉敷まで戻ってきました。そしてなんと、倉敷駅にも駅そばがないんですね。びっくりです。人口が多くて観光客も多いのに。駅舎1階に「杵屋」が入っているのですが、これは「駅そば」とは呼べない値段の店です。
  駅前のチボリ公園の写真を撮って、腹立ち紛れとしました。
  結局、今日の1杯目は岡山駅「あじわい」。岡山駅はすでに2軒実食済みなのですが、この店舗は初食です。これもチェーンというか、中国地方では割とよく目にする店名なんですけどね。特に変わったメニューがなかったので、肉そば(400円)をオーダーします。う〜ん、値段の割にボリューム感に欠けるかなぁ。ちなみに「肉そば」に使う肉は、東日本では豚肉、西日本では牛肉であることが多いそうです。豚肉の方が廉価でしょうから、たくさん乗るのでしょうか。だから、東日本で食べる「肉そば」の方がボリューム感があるのでしょうか。
  岡山からは赤穂線に乗り換えて、ローカル線の旅を楽しみます。その途中で見かけた車窓風景が、これ。京都の大文字焼きならぬ、赤穂の赤文字焼きといったところでしょうか(焼いてはいないか……)。こういう、車窓から眺めるだけで楽しめるのって、いいですね。
  赤穂線に乗り換えたのは、播州赤穂駅「義士そば」で食べたいためでした。改札内外両側から食べられる店の、ホーム側で食べます。天ぷらそば390円。この店には、姫路のゆうめいな「えきそば」を模した(つまり、中華麺を使っている)「ペーロンそば」なるものがあるのですが、これもなんだか二番煎じ的な空気を感じて注文できませんでした。ノーマルそばが結構美味しい(特に太めの麺)ので、わざわざ二番煎じを頼まなくても十分満足できます。
  相生からは再び山陽本線の旅。そして、一気に大阪圏に戻ります。時間的にもそろそろ年越しの準備に入らなければなりませんので、西九条「吉」でスペシャルそば(390円)を食べて今年の駅そば食べ納めとしましょう。言ってみれば、これが私にとっての「年越しそば」ですね。このそば、卵・きつね・えび天・昆布が入った豪華なメニューなのですが、残念ながら卵が割れてしまっていました。今年最後の一杯で割れが入るなんて、不吉な……というか、店員さん、一言断ってよね。
  天王寺駅構内にて。新年まで残り6時間ほどとなった今、世間ではすでに正月ムードが漂いはじめています。来年は亥年でしたか……。
  一応、こんな観光も入れました。中には入っていないんですけどね。大阪ミナミのシンボル・通天閣。それほど高いタワーではないので、中に入るより外から眺めた方が印象的というか、楽しいですね。
  馴染みのカプセルホテル「アルデバラン」に入り、カプセル内のテレビで紅白などを見て、新年を迎えます。なんだか、年末年始という感じがしませんね。唯一「新年だなぁ」と感じたのは、浴室外の休憩所にあるジュースの自販機に注連飾りがつけられていたことくらいでしょうか。さよなら2006年、こんちわ2007年。年の区切りはついたのですが、旅はまだまだ続きます。河内迎春年越しツアー・後編(2007年編)は、また機を改めまして。ひとまず今宵は富士鷹茄子の夢でも見て過ごすことにしましょう。


戻ります。