歩いて熱海Take2ツアー

【10/22 06:23 0歩】

  スタートは、やはりここから。日本橋の「日本道路原標」。8月の失敗をふまえて、今回は品川あたりからスタートに……という考えもあったのだが、最終的には譲れなかった。この旅が成功するか失敗するかは分からないが、仮に成功したとしても、品川スタートにしていたらいつまでも後悔しそうだ。失敗した場合には「同じ過ちを2度繰り返した」ということになるわけで、これはこれでいじいじと後悔しそうではあるが。まぁ、成功させる自信と決意があったということが半分、もう半分はガキの頃から変わらずに張り続けてきた意地だ。
【10/22 06:55 3196歩】 日比谷交差点 通過。
【10/22 07:43 8515歩】 三田二丁目(慶応大学前) 通過。
【10/22 08:24 12770歩】 五反田駅 通過。
【10/22 09:03 17387歩】 松原橋(環七) 通過。
【10/22 09:53 23008歩】

  8月には第一京浜(国道15号)を歩いたのだが、さすがに同じルートを歩くのは嫌なので、今回は国道1号でアプローチする。順調に歩き続けて、玉川大橋を渡って神奈川県に入る。こういう、区切りの瞬間は嬉しいものだが、8月にも神奈川県突入時点では順調だった。今が快調だからといって、油断はできない。
【10/22 10:42 27342歩】

  遅めの朝食を、尻手駅前のこちらのお店で。見知らぬ街へ行き、見知らぬ店(主に立ちそば)で食べる。これが何よりの楽しみだ。この楽しみがなかったら、疲れるだけの徒歩旅行なんてとてもやっていられないだろう。たぬきそばに、奮発して卵を乗せる。まだまだ旅は始まったばかり。スタミナをつけなければ。
【10/22 11:44 34239歩】 子安台交差点 通過。
【10/22 12:19 37992歩】

  国道1号を道なりに進んでいくと、やがて有料道路の横浜新道に入ってしまう。歩行者は入れない道だから、東神奈川駅近くで旧道に入る(写真左方向)。旧道はこの先横浜駅前経由で高島町方面へ続くのだが、この道は8月に通っているので、JR東海道本線の線路の北側の道を西へ歩く。迷いたくないから、あまりマイナーな道には入りたくないのだが、要所要所の地図を持参しているので、大丈夫。
  今日は、昼食も立ちそば。東急東横線反町駅歩5分くらいのところにある、「そば田」。繁華街ではなく、住宅地にあるお店。だから、付近にはあまり人がいないのだが、昼時だったこともあって店内は盛況だった。こういう裏路地の店は、ドライブや鉄道旅ではまず見つけられない。街の隅々にまで目を配れるのが、徒歩旅行のいいところだと、改めて認識した。
【10/22 13:17 42013歩】 浅間下交差点 通過。
【10/22 13:47 45273歩】

  JR保土ヶ谷駅前。たぶん大方の人には理解できないと思うのだが、私はこの駅前風景がとみに好き。広い道路(旧国1)に沿って、アーケードの細々した商店街が続き、そのすぐ裏に線路がある。この商店街がまた適度に寂れているというか、古い店が多くて楽しい。駅の反対側は近代的な街並みだが、国1側は土地が狭くて再開発の余地がないのかな。
【10/22 14:10 47707歩】 井土ヶ谷駅 通過。
【10/22 14:58 53039歩】 山谷交差点 通過。
【10/22 15:33 56872歩】

  8月の失敗の轍を踏まぬよう、今回は権太坂も迂回した。あのダラダラ坂は二度と歩きたくない。代わりに引越坂を上らなければならなくなったが、こちらの方がだいぶ楽。
  不動坂交差点で、国1旧道に入る。すぐのところに、写真の自販機がある。8月には、この飛び出たマンホールのようなところに腰を下ろして、精根尽き果てていた。今にして思えば、熱痙攣を起こす直前だったんだなぁ。
  今日は、まだまだ元気。足も動くし、気力も漲っている。
【10/22 16:10 59784歩】

  戸塚駅前に到着。忌まわしき記憶の土地・戸塚。8月には、ここ(写真の横断歩道)でバッタリと倒れた。今日は、余裕綽々。時間的にも、8月よりもだいぶ早く到着できた。歩数はほとんど変わっていない(8月は59872歩)が、今回の方が距離的にちょっとロスしているため、8月よりも広い歩幅で歩けていると思う。
  こちら、戸塚駅西口。大きなショッピングセンターがあるだけで、あとは何もない。というか、目下相当広い範囲で開発工事が行われている。東京ドーム●個分、というようなレベルだ。いったい何ができるのだろうか。5年後には、戸塚の街並みは大きく変わりそうだ。
  権太坂に代わって引越坂を上ったことで、だいぶ足を温存できたかなと思っていたのだが、考えが甘かった。戸塚駅を出てほどなく、旧国1は長い長い上り坂(大坂)にさしかかった。これが足にだいぶ堪えた。おかげで、高みから街を見下ろすという特権を得ることができたし、坂上を吹き抜ける風の心地よさにも浸ることができた(ちょっと風が強すぎるが)のだが、その代償に足がミシミシ軋み始めている。距離的にも、1日の歩行距離はこのくらいが適量(というか限界?)なのかもしれない。
【10/22 17:14 62634歩】

  戸塚区原宿町にて、綺麗な夕焼け。大坂上で旧国1は新道と合流するのだが、その先は見てのとおりの大渋滞。車より、歩く方が早いっす。
  それにしても、ここで眺めた夕焼けは綺麗だった。雲の感じもいいし、飛行機が通ったのか、一カ所だけ人工的に雲が抉られているのもちょっと面白い。
  すっかり夜になってしまった。足はもうボロボロ。惰性で進んでいる感じで、なかなか意図して前に出すことができない。そんな中、藤沢バイパスと分かれた先で「遊行寺坂」の看板が見えてくる。正直、ギョッとした。そういえば、これもまた箱根駅伝名物の坂道だ……。今、「大坂」のようなダラダラ坂に出くわしたら、乗り越える自信がない。
  しかし幸いにも、遊行寺坂は下り坂だった。疲れた足には下り坂もきついのだが、上りに比べれば精神的に随分負担が軽い。車道は、相変わらず渋滞している。車よりも速く進めるということも、萎えそうな精神力に僅かばかりの活力を与えた。
【10/22 18:03 70976歩】 藤沢橋交差点 通過。
【10/22 18:47 73264歩】

  なんとか、藤沢駅前に到着。いやぁ、苦しかった。休んだ時間を含めれば12時間以上の歩きっぱなし、万歩計を愛用するようになって以来初めての70000歩越え。この記録は、この先破られることはないかなぁ、と思う。破られるとすれば、記録を破るために歩く企画を立案したときだ。今日の辛さが記憶にある限りは、そんな企画は立ち上げないだろう。
  宿に入る前に、藤沢駅構内の「ふじさわ蕎麦」で、たぬきそばをいただく。8月に歩いたときには、まったく食欲が湧かず、結果として熱痙攣を招いた。その点、今日は立ちそばで3回食べているから、塩分補給もバッチリだ。水分補給はもちろんのこと、徒歩旅の際には塩分補給が大事だということは、8月に痛感した。明日以降のためにも、塩分をたっぷり補給できるそばを食べておく……というのは後付けの言い訳で、単に蕎麦好きなだけなのだが。
  夏場なら公園などで野宿することも厭わないのだが、さすがに10月下旬の夜は寒いので、カプセルホテルに入る。藤沢駅歩3分の「システムイン湘南」は、1泊2980円とリーズナブル。深夜に入浴できないどころかロッカールームにも入れないなど、不便な点もあるのだが、カプセルナイスペースが広く、単純に寝るだけなら申し分ない施設である。
【10/23 08:47 0歩(累計73264歩)】

 一夜明けて、2日目の朝。律儀に藤沢駅まで戻って、リスタート。昨夜はカプセルホテルの大浴場で湯に浸かりながら自分で足をマッサージ。朝起きてから再度風呂に入り、またもやマッサージ。丁重にケアした甲斐があったのか、足の状態は思った以上に回復していた。多少、歩き方がぎこちなくなる(がに股になってしまう)のだが、歩き慣れればそれもなくなる。張り切って、今日も歩こう。
【10/23 09:25 4411歩(累計77675歩)】 引地橋 通過。
【10/23 10:06 8141歩(累計81405歩)】 小桜町交差点 通過。
【10/23 10:53 12963歩(累計86227歩)】

  朝食は、茅ヶ崎駅。改札外の「大船軒」と、駅外の「生そば 箱根」、どちらで食べようか迷ったのだが、「生そば 箱根」は小田原にもあることを知っているので、「大船軒」で。例によって、たぬきそばす。ここのそばはつゆが甘いのが特徴。好きな人と嫌いな人がいるかもしれないが。あと、写真では揚げ玉に埋もれて見えなくなっているが、白いカマボコが1枚入っている。このカマボコが非常に美味しかった。まさか「鈴廣」ってことはないだろうけど。
【10/23 11:21 16024歩(累計89288歩)】 下町屋交差点 通過。
  馬入橋で相模川を渡って、平塚市へ。大きな川を渡るときには空が広く開けるので、気持ちがいい。ましてや、今日は絵に描いたような秋晴れ。気温が少々高くて、Tシャツ短パン姿でも汗ばんでしまうのだが、川面から吹き上げてくる涼しい風が体を適度にクールダウンしてくれる。少し離れて併走するJR東海道線が鉄橋を渡る時の音も、なんだか空全体から聞こえてくるようで気持ちいい。
【10/23 12:24 21479歩(累計94743歩)】

  今日の2杯目@平塚「そば新」。エキナカではなくロータリー沿いにある、立ち食いそば屋。ちょうど昼時だったので、激しく混雑していた。食べる場所を確保するのが困難なくらい。写真なんか撮っていると、「コイツ、邪魔だな」と思われそうだ。
  この店にはたぬきがないので、天そばにする。味覚的には普通だが天が大判でボリューム感たっぷり。これで310円はお買い得。
  一瞬、何のことだか分からなかったのだが、よくよく考えてみれば、箱根駅伝で平塚市街を走っていたような記憶はない。なるほど、この辺りは東海道(国1)ではなく海沿いの134号を走るのだ。市街地を駅伝コースから外すのは、てっきり住民の要望によるものなのかと思っていたのだが、どうやら住民はむしろ市街地を走ることを望んでいるらしい。134号の弾丸ストレートも箱根駅伝の名物っぽくなっているけれど、やっぱりできるだけ街なかを走って欲しいと私は思う。なぜなら、箱根駅伝はランナーの姿を見るだけのものではなく、背景の景色をも併せて楽しむものだと思っているから。じゃなかったら、わざわざ箱根くんだりまで行く必要なんてないわけで。ひたすらトラックを周回していればいいわけで。
【10/23 13:21 25613歩(累計98877歩)】 化粧坂 通過。
【10/23 13:40 27763歩(累計101027歩)】

  昨日からの累計で100000万歩を突破した。足は、まだまだ大丈夫。大磯駅へ通じる急坂を見て、「これを上ったら足にきちゃうかな」と不安になったが、上り終えてみれば案外平気だった。大磯駅は国1から少し外れた場所にあって、わざわざ寄り道する必要はないのだが、降りたことがない駅だけに駅そばがあるかどうかを確認せずにいられなかった。ここまでいくと、ほとんど病気。いや、完全に病気。
  大磯名物・東海道松並木。いかにも年代物っぽい、まっすぐには立っていない松の並木。時代劇によく出てきそうな、斜めにはえた松の並木。歴史ある街道ならではの風景だ。綺麗に揃った街路樹も悪くはないが、このくらいばらつきがあった方が、むしろ格好よく感じる。
  この辺りは、車で走ると結構渋滞に泣かされるエリア。片側1車線しかなく、しかも抜け道の類がない(と思う)から、あまりいい思い出がない。今日は空いているが、車で走って空いていた試しがない。こういう場所は、歩くに限る。
【10/23 14:22 32350歩(累計105614歩)】 国府新宿交差点 通過。
【10/23 14:39 34354歩(累計107618歩)】 二宮交差点 通過。
  押切坂上交差点(二宮町)付近。国道1号を歩いていると、随所に「一里塚」の跡が残っているのが分かる。一里塚は、昔の旅人の道標。今、私は随所にチェックポイントを設け、歩数と時間を記録しながら歩いている。昔の旅人は、一里塚をチェックポイントにして、私と同じようなことをやっていたのだろうか。
  ちょっと下半分が真っ黒になってしまったが、押切坂の切り通しを下っていると、真っ正面に綺麗な鱗雲が現れたので、思わずシャッターを切った。見上げていると、雲の流れに飲み込まれそうになる。空に大河が流れているかのよう。実際、写真を逆さにして見れば、激しく流れる川のように見えるのではないか。
  秋は、空の表情がとても豊かで、大好きな季節。
  押切橋を渡って、小田原市に入る。この付近では、小田原市と二宮町の境界が複雑に入り組んでいて、小田原市に入ったと思ったら、すぐにまた二宮町に戻る。「あれ?」と思っていると、またすぐに小田原市になる。どうしてこんなに複雑な境界線にしてしまったのか、理解不能。だが実際には、このような複雑な境界をもつ市町村が全国にあるし、飛び地だって珍しくない。地元の住民が良ければ、それでいいのかな。
【10/23 15:14 38094歩(累計111358歩)】 西湘バイパス橘インター 通過
  せっかく海岸に沿って歩いているので、少し道草を食う。西前川交差点近くで、当てずっぽうで狭い路地を左に入り、坂道を下っていくと海に出られた。
  左右は、どこまでも砂浜が続く。九十九里海岸に負けていないんじゃないかと思えるくらい、どこまでも砂浜。夏には海水浴場として開放される部分もある。オフシーズンには、投げ釣りファンが集う。水平線しか見えない大海原に向かって投げるのは、気持ちいいだろうなぁ。釣れなくてもストレス解消になりそうだ。
  しかし、少し下がって左右を見ると、実はこんな場所だったりする。西湘バイパス、明らかに景観をぶち壊してるよ。西湘バイパスは今年9月の台風で損壊し、まだ完全には復旧していない(この日も、一部通行止めの看板が出ていた)。神をも恐れぬ道路敷設に対する天罰、というのは言い過ぎだろうか。この辺りは平野部が狭い(山鹿海岸線近くまで迫っている)から、山を削るか海岸を犠牲にするかしないと、道路が造れないんだろうな。
【10/23 16:03 41736歩(累計115000歩)】 国府津駅 通過。
  大磯の松並木とはだいぶ情感が違うけれど、西湘バイパスの国府津インター入口付近にも、雰囲気のいい松がある。「並木」と言うには本数が少ないけれど、意地悪としか思えないくらいに斜めに伸び、車道に覆い被さるように立っている。これを「危険だ」とかいって伐採せず、そのまま残している行政には、拍手を送りたい。
【10/23 16:41 45970歩(累計119234歩)】 連歌橋 通過。
  連歌橋を渡ると、俄然「市街地」という感じになってくる。そろそろ陽が傾いてきていて、それに合わせて足の疲れも酷くなってきた。昨日よりだいぶ歩数は少ないのだが、やはり一晩眠っただけでは完全には回復していなかったのだろう。今日は、昨日より行程が短いうえ、アップダウンも少ないから、「楽なつなぎの日」になるだろうと思っていた。だから、この時点で足が思うように動かなくなってきたのは少し意外というか、先行き不安な要素となった。
  写真は、連歌橋近くの電線に集まっていた、雀。昨今流行の「大量発生」だろうか。雀がこんなにたくさん群れるのを、今までに見たことがない。鳴き声もチュンチュンうるさい。もはや、公害の域だ。
  酒匂橋を渡る。背後には、箱根の山々と夕焼け。昨日の夕焼けも綺麗だったが、今日もなかなかの色合いだ。ゴツゴツした箱根の山をバックに眺めるのも、またオツなもの。
  思えば、遠くまで歩いてきたもんだ。2日間で、フルマラソン約2回分。そう考えると、マラソンランナーはすごいなぁと思う。でもね、もしかしたらマラソンよりも歩く方がきついんじゃないかなと思う。心肺的にはマラソンの方がきついけど、足は。マラソンよりも歩幅が小さく、それだけ右足と左足が交差する回数が多くなるのだから。あまりそういうことを言うと、「じゃあ走ってみろよ」と言われそうだな。もちろん、フルマラソンなんて走れませんよ。体力的にもだけど、それ以前に精神的に嫌だ。
【10/23 17:05 48297歩(累計121561歩)】 山王橋 通過。
  ゴールインする前に、コインランドリーを回す。できる限り荷物を減らしたかったので、着替えは1日分しか持参していないのだ。昨日着たものを洗って、今日の入浴後に着る。コインランドリーは「システムイン湘南」にもあったし、道中平塚あたりでも見かけたのだが、ゴール近くまで我慢した。なぜなら、洗濯して、その後で乾燥機にかけるのだが、100円では完全に乾ききらないから。水分を含んでいると重くなるので、できるだけゴールに近いコインランドリーを選んだというわけ。それに、水分を含んだものをカバン内に長時間入れておくと、臭くなるし。
【10/23 19:09 52544歩(累計125808歩)】

  一度休むと、立ち上がるのが辛い。足が「歩くモード」で凝り固まっている。だから、最後のコインランドリーから小田原駅までの、ほんの1000歩ほどがえらく辛く感じた。それでも、どうにか今日のゴール・小田原駅に到着。
  夕食は「てんや」で済ませ、駅歩3分の「万葉の湯」に宿泊。深夜料金を含めると3975円もするお高い健康ランドだが、他に選択肢がないのだからやむを得ない。競合するカプセルホテルでも、できてくれないかなぁ。
  おまけ。小田原駅東口ペデストリアンデッキ上から眺める、小田原城。ライトアップされていて夜空によく映えている。明日は、ここに上るところからスタートするのだと思うと、ちょっと気が重い。できる限りアップダウンは避けたい、そんな気分だ。
【10/24 07:57 0歩(累計125808歩)】

  疲れていて寝付きが早いので、あっという間に朝になる。フカフカのリクライニングシートでもう少しぬくぬくしていたいのだが、出遅れるとそれだけ後が辛くなるので、意を決してチェックアウト。
  今日は、山あり谷ありの最終日。気合いを入れていこう。
  出陣前に、腹ごなし。塩分補給を忘れずにということで、小田原駅小田急改札脇の「生そば 箱根」でたぬきそば。ワカメを結構たっぷり入れてくれたのが嬉しい。これで、今日も歩き切れそうな予感がしてきた。……単純な奴っちゃ。
  小田原城は、それほど高い場所にあるわけではなかった。ほんの5分ほど坂道を上っただけで、天守閣前に到着。本当は天守閣に入りたかったのだが、工事中で入れなかった。
  昨日は大磯と国府津で印象的な「松のある風景」を眺めたのだが、ここ小田原城の松もなかなか見事だ。松を避けて天守閣の写真を撮ることもできたのだが、後で見ると松入りの方が圧倒的に雰囲気がいい。今にも、暴れん坊将軍が馬に乗って駆け抜けそうな気配がある。
  天守閣前(本丸)には、ミニ動物園のようなコーナーがある。本当は象(名はウメ子。今年60歳になる)がメインなのだが、この時間にはまだお休みの様子。しかし、猿の方は元気いっぱい。岩山の周りをグルグルと走り回っている。檻が小さいのがちょっとかわいそうに思えるくらいに、元気がいい。もう少し広いところで飼育してあげた方が良さそうだが……。
  北門から入って、南門から出る。お堀では、水草の撤去作業に勤しむ人々が汗を流していた。これを全部撤去するというのは、大変どころの騒ぎじゃない。しかも、一株ずつ手で引き上げてはボートに乗せていく。作業員は2人。もう8割方終わっている様子だったが、いったいこれまでに何日かかって、あと何日で終わるのだろうか。ご苦労様です。
【10/24 09:05 4923歩(累計130731歩)】 早川駅 通過。
  早川口交差点で国道1号と別れて、ここからは135号を南下する旅路。いよいよ、伊豆半島の付け根にさしかかった。
  国道135号は、ところによっては歩道がなく、しかも山側は背の高い草が生い茂っているので、歩きにくい。交通量も多いし、特に大型トラックが多いから、危険だ。どうしてちゃんと歩道を整備しないのか。まぁ、歩く人がほとんどいないということなのだろうけど。景色のいい海岸道路なのだが、トラックが怖くておちおち景色に見入ってばかりもいられないのが残念だ。
  根府川駅の手前で、国道135号は真鶴道路と旧道に分岐する。真鶴道路を歩ければアップダウンが少なくて楽チンなのだが、残念ながら自動車専用道路。旧道は、ここから一気に山を上り、ほぼ稜線上を縦走する形になる。今日最初の、そして最大の難所である。
  上り坂は辛いのだけど、景色はすばらしい。JR根府川駅に近いこの場所からは、眼下に真鶴道路、その向こうには広大な相模湾と昨日歩いてきた平塚〜小田原あたりが一望できる。JR根府川駅のホームからもこれと似た風景が眺められ、おかげで根府川駅は「関東の駅100選」に選ばれている。
【10/24 09:57 10686歩(累計136494歩)】 根府川駅 通過。
【10/24 10:50 14994歩(累計140802歩)】 小山王停留所 通過。
  根府川から真鶴にかけては、蜜柑栽培が盛んなエリア。あちこちに果樹園がある。ただ、先に述べたように稜線に近い場所に道路が通っていて、右も左も急傾斜地だから、農家経営は大変だと思う。収穫作業なんて、超重労働なのではないだろうか……と思いきや、こんな文明の利器があった。
  これは、果樹園内をくまなく巡っている鉄道。モノレールだね。人が乗れるのかどうか分からないが、収穫した果実はこのモノレールで道路まで運べるようになっている。農家によって、敷いている鉄道のタイプが異なるのが面白いところ。写真のようなモノレールもあれば、レールを2本並べたトロッコのような収穫軌道を持つ農家もある。これから、蜜柑は収穫の本番を迎える。今年も、この鉄道が大活躍するのだろう。
  一般の農家だけではなく、観光客に蜜柑狩りをさせる観光農園や、直売所もあちこちにある。直売所は無人のものが多い。覗いてみると、結構安い。1袋(10個くらい入っていただろうか)で200円程度。よっぽど「買っていこうかな」と思ったのだが、あまりにもずっしりと重いのでやめた。今度、車で来たときにでも買うことにしよう。美味そうだからね。
【10/24 11:38 20141歩(累計145949歩)】

  峠を越えて、真鶴市街への下り坂にさしかかる。滝の入のカーブを右に曲がると、急に視野が開ける。眼下には真鶴の市街と、真鶴道路の岩大橋。この辺りには真鶴道路にも新道と旧道があって、岩大橋は新道の方。やはり、自動車専用道路。旧道は真鶴市街(駅前)に直結している。当然、歩行者も歩ける。それだったら、真鶴道路の旧道は全面的に歩行者に開放してほしいものだ。
  山の上では蜜柑だったが、市街に近づくと石材店が多く見られるようになってくる。真鶴は本小松石の産地としても有名なのだ。墓石だけでなく灯籠や記念碑用の石材なども見られる。もしかしたら、日常何気なく接しているモニュメントや記念碑の中に、真鶴産の石が使われているものがあるのかもしれない。
【10/24 11:57 21989歩(累計147797歩)】

  真鶴駅に到着。これで、今日3つある難所の1つを越えた。残る2つは(地図を見る限りでは)根府川〜真鶴ほど険しくはないようだから、一安心だ。午前中にこの山を越えるように予定を組んだのは正解だった。夕方になってからの山越えだったら、弱音を吐いていたかも。
  ところで、真鶴駅前に停車していた伊豆箱根バスは、なぜか西武ライオンズ仕様だった。西武の資本が入っているのかな?
【10/24 12:28 23877歩(累計149685歩)】 舟付停留所 通過。
  真鶴・湯河原間の門川停留所にて、壊滅的な時刻表。小田原から真鶴まではそれなりに本数があるのだが、真鶴から南はかなりヤバイ。平日は1日2本、土曜は1本、日曜は……ゼロ! こんな路線バス、アリか? 
【10/24 13:04 27330歩(累計153138歩)】 湯河原駅 通過。
  遂に、こんなところまで来てしまった。静岡県に入ります。この県境を一歩越えるということの意義は大きい。気持ちの問題だが、「神奈川=近い、静岡=遠い」というイメージがあるから。
  ただ、ここでまたしても国道135号は旧道と有料道路(熱海ビーチライン)に分岐する。旧道の方は、もちろん山越えルート。本日第二の、難所である。
【10/24 13:54 31580歩(累計157388歩)】

  大名ヶ丘を一気に上り、伊豆山に至る難所が続く。ダラダラ長いだけでなく、勾配も結構きつい。歩道が整備されていたのが救いだ。「これを越えれば熱海市街だ」という気持ちだけが、足を動かす。
【10/24 14:16 34164歩(累計159972歩)】 伊豆山停留所 通過。
【10/24 14:49 37374歩(累計163182歩)】

  とうとう、熱海駅まで歩ききってしまった。「絶対達成できる」と信じて歩き始めたのだが、いざ達成してみると「よく達成できたなぁ」と、我ながら感心する。
  本当は駅前の公衆浴場で温泉に入りたかったのだが、よりにもよって今日が定休日。仕方なく、駅前の足湯「家康の湯」で我慢する。20分ほど浸かって、少しは疲れが癒えるかと思ったのだが、足、それも脹脛から下だけでは効果が薄いようだ。
  当初、熱海で歩きやめてもいいかなと思っていた。しかし、まだ時間的に早いし、体力的にもまだ少しは歩ける。熱海なんてそうそう(歩いて)来られる場所ではないのだから、限界まで歩こう。
  熱海市街では、随所に「温泉地」を実感させる要素がある。排水溝から吹き出る湯気も、その一つ。手をかざせば、当然温かい。「熱海=つまらない観光地」という先入観が、少しだけ瓦解した。
  人工的に作られたものではあるけれど、こういう南国情緒溢れる景色を見られるのもいいなぁ。こういう「異国」情緒を楽しめると、「遠くまで歩いた感」が高まってくる。小田原までの松とはまた別の良さが、熱海にはある。
  もちろん、熱海にも松はある。それも、とびきり有名な松が。私は今まで何回か熱海を訪れているが、この「お宮の松」をじっくり見たのは初めてだ。木そのものにはこれといってインパクトはないのだが、まぁ一応有名な観光スポットだからね、押さえておいたまで。
  東海岸町付近で振り返る、熱海駅方面。いやはや、よくもまぁ平地の少ない街にこれだけ多くの高層ホテルが建ったものだ。こうして遠くから眺めるぶんには、完全に「つまらないリゾート地」だね。
【10/24 16:20 43967歩(累計169975歩)】

  熱海市街を出て、最後の難所・錦ヶ浦を越える。夕方になっての山越えは、やっぱりしんどい。しかし、アカオリゾート付近では広く眺望が開け、遠望すると伊豆大島まで眺めることができ、疲れが吹き飛んだ。大島に限らず、伊豆諸島や小笠原諸島は、私にとって未開の地。歩くのにちょうどいいサイズの島も多いから、いずれは渡ってみたいものだ。
【10/24 17:00 48251歩(累計174059歩)】

  終点は網代駅と決めたのだが、途中の伊豆多賀駅にも寄ってみる。が、これが失敗だった。地図で見ると海岸からそれほど離れていないため、楽に行けるだろうと思っていたのだが、実はこの駅があるのは山の上。予定外の難所歩きで足がすっかり棒になってしまった。おまけに、駅前のベンチで20分ほど休んだものだから、立ち上がるのが辛かったこと辛かったこと。よほど、この駅で終わりにしようと思った。が、最後の気力を振り絞って、歩く。
  今日も、陽が暮れた。暗くなって急に気温が下がり始め、歩いていても肌寒いくらいになった。そろそろ限界。もうとっくに限界。早く帰りたい。買ってしまうのは勿体なく思えるのだけど、それ以上に「楽になりたい」気持ちが大きい。最後、網代駅までは、疲れを紛らすために歩数を数え(口ずさみ)ながら歩いた。
【10/24 18:04 52376歩(累計178184歩)】

  網代まで完歩! 駅に着くなり、待合室のベンチにへたり込んだ。立ち上がるのが辛くなると分かっていながら、発車ギリギリまでグデ〜っと過ごした。この辺が、限界かな。
  網代駅に掲げてあった注意書き。この駅は夜間無人になるのだが、どうやら待合室は閉め出されてしまうらしい。なので、駅寝はできない。駅寝ファン(というわけではないが、なにしろ金をかけたくないので)としては、悲しいことだ。別に悪さをしているわけじゃないし、ゴミだってちゃんと持ち帰るのだから、寝るくらいいいじゃないか……と言いたいところだが、中には悪さをする人もいるし、ゴミを散らかす人もいるということなのだろう。
  行きがけならぬ、帰りがけの駄賃。熱海駅ホームの「生そば処」で、最後の一杯。小田原以上にワカメがたくさん入った月見そばをすすって帰る。
  それにしても、3日間かけて歩いてきて、帰りは電車で3時間。呆気ないというか、苦労が報われた感じがしないというか。収穫は、電車に揺られている間に足の疲れが回復して、駅から自宅までわけなく歩けたということ。翌日も、日常生活には支障ないくらいに回復していて、自分でもビックリした。連日、行程終了時にはボロボロになったのに、翌日にはしっかり回復する。もう少しペースを落として、ボロボロになる前にその日の行程を終えるように工夫すれば、どこまでも歩いていけるかもしれない。今回は2泊だが、3泊4泊と伸ばすことだってできそうだ。むしろ、金や時間の問題の方が大きい。距離や日数はどうなるか分からないが、今後も年に1〜2回くらいは「歩いて○○ツアー」を企画・実行することにしよう。そう思えるくらい、今回の旅は充実していたと思う。辛かったけど、「どうしてわざわざこんなに辛いことをしなくちゃならないんだ」とも思ったけど、終えたときの達成感はひとしおだった。この達成感を味わうだけのために、苦労する価値はある……だろう。


戻ります。