倉庫27:高徳ブギウギ取材ツアー

  今回の旅は、東京駅八重洲南口バスターミナルから始まります。夜行バス。青春18きっぷが使えない時期には、電車よりもバスの方が便利で安く、そして早い。特に東京・大阪間であれば、片道3430円(ネット予約割引含む)からあります。
  後ろ半分しか写っていませんが、このバスこそ片道3430円の「青春メガドリーム号」。2階建て4列シートで、定員はなんと80人! 特殊車両であるため、定められた道路しか走ることができず、工事や事故で渋滞が発生するとダイヤが大きく乱れてしまうのが難点ですが、とにかく安くと望む人には最適な便です。
  1時間半遅れで大阪駅桜橋口に到着。すぐさまJRに乗り換えて三ノ宮へ。そして歩いて神戸新港へ向かい、ジャンボフェリー高松行きに乗ります。本当はもっと余裕のある予定だったんですけどね、1時間半遅れたおかげでかなりドタバタになりました。なにしろ、ジャンボフェリーは1日5便しかないですから、乗り遅れると5時間待ちになってしまうのです。運賃は片道1800円。往復だと割引になり、3290円。復路券は2ヶ月間有効です。
  ちなみに、東京から高松への夜行バスもありますが、フェリー経由の方が運賃は安いです。早いのは断然バスですが。
  船内には、売店を兼ねた讃岐うどん店が入っています。バスが遅れて朝食を食べていなかったので、オリジナルカレーうどん(500円)をいただきました。カレーうどんとオリジナルカレーうどんがあったのですが、食べ比べてはいないのでどう違うのかは不明。値段が同じだったので、なんとなく「オリジナル」の方を選びました。ただ、調理シーンを覗き見たら、カレーはレトルトでしたね。市販品ではないようですが。
  窓際に設置されたカウンター席でカレーうどんを啜っていたら、ちょうど明石海峡大橋の下を潜りました。この橋、国道2号を車で走って潜るときにはトンネルに入ってしまいますから、なかなか真下から見上げる機会がありません。船に乗れば、こういう機会にも恵まれるんですね。
  高松港から高松市街までは、ちょっと距離があります。歩くと3〜40分くらい。そこそこ嫌になる距離なのですが、フェリーの到着時刻に合わせて、高松駅前行きのバスが出ています。これがなんと無料! かなり古いタイプのバスで、お世辞にも乗り心地がよいとは言えないのですが、10分かそこらですし、名にしろ無料ですから。ありがたく利用させてもらいました。ちなみに、神戸港から三ノ宮駅行きのバスも出ているのですが、こちらは有料なので注意が必要です。
  ここから、いよいよ本題の取材活動に入ります。今回の旅の目的は、四国の駅そば(うどん含む)ネタを集めること。最低でも、2軒。しかも、記事にする程度の特徴のある店でなければなりません。
  その意味では、1軒目で「じゃこ天うどん」に出会えたのはラッキーでした。高松駅改札内外両側で食べられる「連絡船うどん」。四国名物のじゃこ天を1枚丸ごと乗せたうどんが、470円です。ジャンボフェリー内で食べたものよりも麺にコシがあって、つゆも透き通るような清涼感があって、美味しくいただけました。これで、1軒確保。
  高松からJR高徳線で徳島へ向かいます。四国の鉄道事情はなかなかに酷く、鈍行で長距離を移動しようとすると結構大変です。やたらと長い待ち時間が発生するようなダイヤ編成になっています。まぁ、私はタバコを吸う人間ですから、2分3分での乗り継ぎ編成というのも困りものなのですが。むしろ、長閑でいいんじゃないですか。急いでいることすら忘れさせるようなダイヤで。
  2軒目の取材は、徳島駅ホームの「かけはし」。四国内に数軒ある「かけはし」ですが、実は店舗ごとに運営会社が異なります。したがって、店を変えればまったく異なる味に出会えます。以前に松山駅の「かけはし」では食べたことがあるのですが、果たして徳島の「かけはし」はいかに。
  写真は、この店一番の人気メニュー・肉そば。徳島に限らず、西日本では肉を使ったそばの人気が高いですね。じゃこ天そばもあったのですが、高松とかぶってしまうので、敢えて肉そばを取材することにしました。甘い肉汁がつゆと混ざり合って、なかなか美味かったです。
  ここからは、早くもおまけモードです。仕事としての取材活動は無事にすべて終わったので、あとは気楽にブラリ旅。
  徳島と言えば徳島ラーメンということで、駅前の「徳島シティ」6階に入っているラーメン店「いわた」で一杯食べてみることにしました。
  徳島ラーメンの特徴は、肉と卵が入るということ。スープは、この店は豚骨醤油でしたが、他の徳島ラーメンはどうなんでしょうかね。徳島出身の知人が、「徳島ラーメンは『すきやきラーメン』だ」と言っていたので、もっと甘くて醤油が濃いスープを連想していたのですが。あと、全体的にボリュームが控えめなのが私にはあまり向かない感じです。
  「徳島シティ」を出ると、すっかり夜。ここから、少し歩きます。JR高徳線で2駅分、吉成駅まで。本当は池谷駅くらいまで歩こうと思っていたのですが、地方は駅間が長いですね。2駅分歩くのにたっぷり2時間かかりました。しかも、最後の方は列車の時間に遅れそうになって走りました。四国三郎橋から望んだ朧月が綺麗だったのですが、立ち止まって写真を撮っているヒマはありませんでした。今度から、地方を練り歩くときにはもっと時間に余裕を持って望みたいと思います。東京で歩くのとは、ワケが違いました。
  帰りも、ジャンボフェリー。ジャンボフェリーは上下線とも夜行便があります。神戸発・高松発ともに00:45発→04:45着。ちょっと時間が短いですが、強引に考えれば一泊の宿としても使える便です。船室内に毛布や枕の備品がなかったのが残念ですが、乗客が少なくて(私は)よく休めました。
  ちなみに、夜行便は売店も讃岐うどん店も営業していません。食料は船内では手に入らないので、乗船前に確保しておきましょう。
  一夜明けて、神戸です。すでに仕事は終わって、あとは夜行バスが出る時間まで完全フリー。少し神戸界隈を歩いて、それから有馬温泉に行って湯浴みを楽しみましょう。
  というわけで、まずはハーバーランドエリアを歩きます。ポートタワーは神戸のランドマークですが、行ってみると意外とショボいですね。周囲の高層ビルに埋もれています。きっと、タワーが建ったときにはあまり高い建物が周りにはなかったけれど、近年になって増えてきた、ということなのでしょう。まだ営業時間前だった(フェリー到着の04:45から歩いています)ので、タワー内には入っていません。
  朝食は、兵庫駅北口の「麺家」で。いろいろな具材が乗っていますが、シンプルに月見そばです。カマボコと海苔は店側で入れてくれ、天かすはフリーで入れ放題です。嬉しいんですけどね、「麺家」、近頃店舗数が大幅に増えてきて、なんだか一時期の首都圏の「あじさい茶屋」みたいになってきているのがちょっと気がかりです。ローカル店が閉店して跡地に「麺家」ができるというパターンが多いのです。パッと思いつくだけでも明石・弁天町・京橋と、次々と名が挙がります。うまくてサービスもいいんですけどね、あまり画一的にはならないでほしいなと思います。
  続いて、地下鉄山手線湊川公園(神戸電鉄有馬線湊川駅)外にある「湊川」で天ぷらそばを。立ち食いカウンター一本の小さな店で、天ぷらもインスタントものなのですが、おばちゃんの愛想が良くて印象に残った店です。値段が安い(天ぷらそば270円)のも好印象ですね。純粋に出来映えだけで比較すると「麺家」の方が完成度は高いのかもしれませんが、私は情緒とか人間味なんていうものまでをも味わう人間ですので、どちらの店にまた行きたいかと問われれば、こちらになってしまうんですね。
  有馬温泉は、神戸電鉄有馬線の終点。そのため、神戸電鉄に沿ってズンズン歩きます。ところが、鵯越の辺りで道がなくなり(自動車専用道路になってしまう)、いつしか山の中に。日に数えるほどしか人が通らないであろう獣道に迷い込んでしまいました。昼間とはいえ、まったく土地鑑のない場所でこういうところに迷い込むと、さすがに焦ります。
  這々の体で山を下りてきたと思ったら、丸山駅側(六甲山地の南側)でした。児童公園に出たのですが、獣道の入口にはこんな看板というかビニールシートが張られていました。住宅地から結構近いのですが、イノシシ、出るんですね。
  結局、歩いて六甲山地を越えるのは無理だと判断して、神戸電鉄に乗って鈴蘭台までワープ。ほんの2駅なんですけどね、距離にすると7kmくらいあるみたいです。地図上では歩行者が歩けそうな道も通じているのですが、一度山の中に迷い込んでしまうと、もう戦意喪失です。
  六甲山地の北側、鈴蘭台から先は住宅地が点在するエリアになりますので、また歩き始めます。時間も体力もたっぷりあることだし。
  途中には、こんな名前の駅もあります。これが見事に言い得ていて、鈴蘭台以北はどの街も「山の街」という感じです。山と街が交互に現れる感じ。でも、結構電車を乗り降りする人も多くて、県道の交通量も多くて、さほど「田舎」という感じではありません。「郊外」と呼ぶには山がちだし、言葉で表すのが難しいですね。
  結局、唐櫃台駅まで歩きました。唐櫃台から有馬温泉まではたったの2駅なのですが、大池駅を越えた辺りで県道から歩道が消え、歩きにくくなってきたので終わりにしました。
  終点の有馬温泉駅はモダンすぎて、由緒正しき有馬温泉の街並みにはあまりマッチしていません。もっと、入母屋造にするとか、周りの景観に合わせた駅舎にしてほしいなぁ。さすがは有名な温泉地だけあって駅利用者も多く、駅そばもあるんじゃないかと期待したのですが、残念ながらありませんでした。
  有馬温泉にはいろいろな泉源があるのですが、今回は「銀の湯」に入りました。入浴料が安い(550円)ということもありますが、「金の湯」は過去に入ったことがある(リニューアル前ですが)ので。でも、泉質は「金の湯」の方が私好みですね。鉄臭くて、特徴がハッキリしているので、印象強いです。「銀の湯」は無色透明で、泉質の善し悪しが分かりにくい感じでした。
  写真は、「金の湯」の泉源となっている「御所泉源」。塩分と鉄分が多く含まれ、塩分濃度は日本一なのだそうです。温泉街を歩いていると、頻繁に「泉源」に出会えます。これもまた、有馬温泉観光の楽しみの一つですね。
  帰りは神鉄ではなく、路線バスで阪急宝塚駅へ出ます。どっちが安いとか早いとかいうことではなく、単に同じルートを引き返すのが性に合わないからです。
  有馬温泉街の中心部にバスターミナルがあり、各方面へのバスが頻繁に発着しています。道も車庫も狭くて、バスの運転手は大変だろうなぁ。ちなみに、有馬温泉→宝塚駅の運賃は550円。現金でも乗れますが、ターミナル内に切符販売機があり、事前に購入することもできます。
  阪急で大阪に戻ります。途中で、駅そばを1杯。阪急で駅そばと言えば、当然「阪急そば」です。阪急塚口駅の改札内に店舗があるということを、2カ月前の甲子園ツアーの際に確認してあったので、そこで食べます。きつねそばですね。大阪(関西都市圏)のきつねそばは、概してきつねが長方形で、やたらと大きいですね。2つに切るとか、三角にするとかといった発想は毛頭ないようで、大きさを誇示するかのようにドドンと乗せるケースが目立つように思います。見栄えの問題ですかね。確かに、小さいのが2〜3枚乗っているより、大きいのが1枚ドンと乗っていた方が景気がいい感じはしますね。
  バスの発車までまだ少し時間があったので、福島駅前のマックで一休みし、すぐ近くにあった「都そば」でまた一杯いただきました。昆布そばです。見た目にはあまり豪華でないというか、ちょっと貧相に見えるのですが、これもまた関西ならではのメニューの一つ。首都圏でもまれに見かけますけどね、関西では「当然扱っているメニュー」です。塩っ気が心地良いですね。関西風のつゆによく合う味覚だと思います。首都圏で比較的珍しいメニューになっているのは、つゆが違うからかもしれないですね。
  ラスト1枚は、帰りの青春メガドリーム号が休憩で立ち寄った足柄SAでのひとこま。足柄SAは富士山のお膝元。頂上にわずかに雪を被った霊峰の上に、真昼の月が。足柄で一度バスを降りた乗客のうち、約半数がこれと同じような写真を撮って帰ったはずです。ほとんど撮影会のような光景が展開されました。
  行きのバスは1時間半遅れでしたが、帰りはそれを上回る2時間の遅れ。特に東京都に入ってからの渋滞が酷く、最後の方は乗客全員がぐったり、というありさまになってしまいました。青春メガドリーム号に乗るときには、体力とよく相談しましょう。また、座席(全席指定)を選ぶ際には、なるべく通路側を選ぶようにした方が無難です。窓際はとにかく狭いです。夜行だから、どうせ外の景色なんてロクに見えないので。

戻ります。