倉庫32:雪之永平寺参拝ツアー

  04:34発の山手始発で池袋を出発。新宿で中央線に乗り換え、高尾で乗り継いで大月へ。ここでようやく空が明るくなってきたのだが、そこはもうすでに銀世界への入口だった。東京から、それほど高くない山を1つ隔てただけなのに、この景色の変化。まぁ、予報では「東京でも雪が降るかも」とのことだったから、別段不思議でもないか。むしろ、東京で降らなかったことの方が奇異なのかもしれない。
  朝食は、松本駅で。1番ホーム階段脇の目立たないところで営業している「信州坊主」という店で、「ネギそば」をいただきます。これ、長野県内の駅そばではよく見かけるメニューなんですけどね、実態は「かけそば+ネギ大盛り」です。廉価なメニュー(概ねかけ+30円くらい)だから文句は言えませんが、個人的に「南蛮ネギでも乗せるのかな」と思っていただけに、ちょっと。まぁ、生ネギは相当体にいいらしいですから、健康食だと思って。
  松本から大糸線に入ります。大糸線の鈍行は、大半の便が信濃大町&南小谷での乗り継ぎになります(松本〜南小谷直通便もあるが、信濃大町で長時間停車となる)。この待ち時間を利用して、信濃大町でも一杯。この駅では2000年に一度食べているのですが、この9年ほどの間に業者が変わり、店の意匠も一変していましたので、新たな気持ちで月見そばを注文。メニューや値段構成から考えて、松本「信州坊主」と同じ業者ですね。ただし、店名は違っています。信濃大町では「カタクリの花」という店名で営業しています。
  長野県に入って、一時的に雪はなくなっていたのですが、信濃大町から北はさすがにスキー場が多いエリアだけあって、ハデに雪が積もっていました。積もるだけでなく、降り方も凄まじいですね。雪と言うより、吹雪。吹雪と言うより、ブリザード。写真は南小谷駅の跨線橋から撮ったものですが、もうほとんど白一色。街なかにはブルドーザーが多数出動して、除雪作業にあたっていました。この辺りでは、普通の民家でも小型ブルドーザーを所有しているようですね。自家用車よりもブルドーザーの方が多く走っていました。
  こちら、JR南小谷駅の待合室。いいですね、駅舎内にこたつがあります。写ってはいませんが、ストーブもあります。南小谷では長時間の乗り継ぎ待ちが発生することが多いですから、こういう寒さ対策には余念がありません。欲を言えば、もっと大人数で入れるこたつがあると良いですね。
  南小谷は、JR東日本と西日本の境界駅でもあります。南小谷から北側はJR西日本の管区になります。だからでしょうか、南小谷→糸魚川の列車は、これまで乗ってきたのとは明らかに異なる仕様の車両でした。これぞローカル! と言いたくなります。もちろん、1両ワンマンです。列車旅では、一度くらいはこういうローカル路線の超ローカル車両に乗りたいものです。
  先が長いので、少々端折ります。糸魚川で北陸本線に乗り換え、一路西へ。辿り着いたのは、福井駅。ここでいただく本日の夕食は、福井名物の「にしんそば」。私は、個人的にはこの手の生臭さはあまり好きな方ではないのですが、やはり名物は押さえておきたい。値段も結構高い(440円)んですけどね。ちなみに、福井駅の駅そば「今庄そば」は、夜23時まで営業しています(改札脇の店舗)。駅周辺に深夜営業の飲食店があまりないので、心強い存在です。
  福井でえちぜん鉄道に乗り換え、3駅。越前開発駅で降ります。この写真は、駅前というか、踏切内の光景。融雪目的のスプリンクラーが勢いよく噴出しています。これ、お湯なので直に触れると熱いです。しかも、道路に積もった雪をまんべんなく溶かすために、あらゆる方向に向けて噴出しているので、どこをどう歩いても足にビッチョリとかかります。もうちょっと、なんちとかならないでしょうか。雪を溶かすことは大事ですが、歩行者の安全確保という前提をなおざりにしてはいけません。たとえば、噴出口を可動式にして回転させ、回転に合わせて歩けば濡れなくてすむとか。もう少し噴出角度を低くして、せいぜい靴が濡れる程度ですむようにする、とか。
  越前開発駅から歩いて5分くらいのところに、健康ランド「ジョイフルFUKUI」があります。初日は、ここで一泊します。ちょっと古い感じの、いかにも地方にありそうな健康ランドです。大広間があって、ドサ周りの劇団公演があって、みたいな。値段が結構安いので、今後また使う機会があるかもしれません。ちなみに、館内で食事をすると大変高いモノにつきます。国道の向かいにマックや幸楽苑などがあるので、食事は外で済ませてから入館した方がいいでしょう。
  2日目は、越前開発駅でえちぜん鉄道に乗ってスタート。土日祝にのみ発売されるお得な1日券を使います。価格は800円なのですが、福井〜永平寺口間を往復するだけでも元が取れてしまう(普通運賃は片道440円)という、恐ろしくお得な切符です。全線乗車の普通運賃は3000円で、途中下車をすると考えるとさらに高いものになりますので、是非とも1日券の利用をオススメします。何度でも乗り降りできるという点で、青春18きっぷ感覚で使えるのがいいですね。
  永平寺口駅から永平寺までは、路線バスで。所要時間は約20分、運賃410円。結構高いですけどね、この便には私ともう一人(この人も永平寺参拝の観光客だった)しか乗っていませんでしたから、客数を考えるとこのくらいの運賃設定にしないと経営が続かないのでしょう。
  なんやかんやで、永平寺に到着。朝イチなので、ひっそりと静まり返っています。門前町の土産物店も大半がまだ開店前。雪が森々と舞い降りていて、神秘的なムードたっぷりです。
  永平寺は、境内散策は自由にできるのですが、建物内に入るには拝観料500円が必要となります。ちょうど朝の清掃修業の時間と重なったため、終わるのを待ってから拝観します。数十人の修行僧が一斉に雑巾掛けをするシーンを見てみたかったのですが、それは見せ物ではないからダメとのことでした。ちなみに、写真撮影は基本的に許可されていますが、修行僧を撮影することは禁止されています。
  長大な伽藍が巡らされていて、すごく広いです。これは掃除も大変だろうなぁ、と思います。また、建物が古いためでしょうか、機密性があまりよくなく、建物内でも非常に寒いです。厳寒と言ってもいいかもしれません。そんな中、柱や天井は煤けていて黒ずんでいるのに、床面はツルツルに磨かれています。これも修業の成果なのでしょう。
  山中の寺なので、階段もたくさんあります。それも、半端なく長い。
  法堂は煌びやかな装飾が施されていますが、それほど広い部屋ではありません。
  こちらは仏殿。堂々たる古刹、といったイメージでしょうか。
  建物内を見て回るのもいいんですが、永平寺の最大の魅力は、やっぱり雪景色だと思います。自然と人工物の見事な調和。どんな季節に訪れてもその季節ならではの良さがあるとは思いますが、雪とのマッチングが素人目には一番映えるのではないかな、と感じます。雪が降るのではなく、1粒1粒が意志を持って舞い降りている、とさえ感じます。時折一陣の風が吹くと、まるで夢から覚めたかのようです。
  こんな面白いモノもあります。柱のように見える黒い棒は、巨大なすりこぎ棒です。
  雪景色の写真をもう1枚載せておきましょう。こういう景色が見たくて永平寺を訪れただけに、まさに期待どおりでした。いずれ季節を変えて再訪したいという気持ちはありますが、おそらくその時には「また冬に来よう」と思うのではないかなと思います。
  帰りはバスに乗らず、永平寺口駅まで歩きました。所要時間は、約1時間くらいだったでしょうか。せっかく1日券を持っているので、少々道草を食うことにしましょう。
  えちぜん鉄道が素晴らしいなと思ったのは、無人駅が多くて利用客もそれほど多くはないにも関わらず、ワンマン運転ではなく車掌を置いているんですね(おそらく土日祝の日中のみ)。例外なく、若い女性です。で、ちょっとした沿線案内とか、グッズ情報などをアナウンスするわけです。さらには、乗客の一人一人に笑顔で声をかける心遣い。ローカル私鉄の鏡のような存在だなと感じました。
  まずは、勝山永平寺線の終着駅・勝山へ。ここで、昼食をとります。駅付近には食事処が2〜3軒しかなく、「市」の代表駅にしては寂しい限りなのですが、なんとか「みどり亭」という食堂で福井名物の「ソースカツ丼」にありつくことができました。以前に福井駅周辺で食べた時には、カツをソースにどっぷりと浸したものがご飯に乗っていたのですが、この店ではカツにソースをかけていますね。キャベツを敷かないのは共通していて、これは福井のソースカツ丼の共通認識になっているようです。
  一度福井(福井口駅)に戻り、今度は三国芦原線に乗り換えて終点の三国港駅へ。これで、えちぜん鉄道全線乗車達成です。この駅は名勝・東尋坊の最寄り駅。東尋坊へは過去に一度行ったことがあるのですが、冬場の荒れ狂う東尋坊も見てみたかったので、歩いて行きます。ちなみに、一般的な観光客は1つ手前の三国駅で降り、バスで東尋坊へ行くようです。三国港駅は最寄り駅ではあるとはいえ、歩くと30分近くかかります。道中の遊歩道も悪くないですけどね。
  これが冬の東尋坊。海面全体が白く泡立っていて、屹立する断崖の険しさを寄り一層引き立てています。この日は天候も思わしくなく、観光に来ていたのはほんの5〜6人でした。
  少し端折りますが、東尋坊から芦原温泉駅まで約3時間半くらい歩きました。本当は牛ノ谷駅くらいまで歩きたかったのですが、雪が酷くなり、車が跳ねた泥雪を2度立て続けに頭からかぶり、戦意を喪失しました。
  這々の体でJR北陸本線に乗り、動橋駅へ。約30分ほど歩いたところにある「バイパスレジャーランド」内の健康ランド「加賀ゆめのゆ」が宿泊地となります。ここも比較的安くてよかったんですけどね、宿泊者向けではない施設の方が重視されているような造りで、宿泊者にとってはただ寝るだけでした。
  最終日も雪中行軍です。雪の勢いは昨日よりもさらに増し、粟津駅まで歩く間に服も荷物もびしょ濡れになりました。そんな体を癒してくれるのが、一杯の駅そばですね。金沢駅改札内コンコースにある「白山そば」の、めかぶそばです。この店はちょっと変わっていて、麺は小・中・大から選ぶシステムになっています。セルフうどん形式ですね。透明なつゆと白ネギのコンビネーションが、相変わらず金沢らしさを発揮しています。
  昼食は、駅弁で。駅そばばかり食べているイメージがあるかもしれませんが、1回の旅で1食くらいは駅弁も食べるんです。富山駅「源」の、「富山湾弁当」。いろいろな味覚が楽しめるタイプの弁当ですが、個人的にはホタルイカが入っていたことが嬉しかったですね。佃煮ですけど。本当は沖漬けが食べたかった……。沖漬けは好き嫌いがハッキリ別れるから、汎用の弁当には入れにくいんでしょうね。
  親不知を越えて糸魚川に着く頃には雪は止み、空が綺麗に晴れ渡りました。街にも積もっていないので、この辺りにはほとんど降っていないようですね。
  さて、直江津で乗り換えた信越本線の快速妙高号は、特急仕様の車両でした。リクライニングできて、テーブルが使えます。18きっぷでこういう車両に乗れると、ちょっと得した気分になりますね。
  長野駅でも駅そばを食べているのですが、そばの写真を撮り忘れたのでスルーします。篠ノ井線に乗り換えて南下すると、稲荷山駅を過ぎてから一気に高度を上げ、姨捨駅でスイッチバックします。この、姨捨駅ホームからの眺めが個人的にツボですね。たぶん、写真だと半分も感動が伝わらないと思うんですけど。スイッチバックのため、5分ほどの停車時間を設けてあるので、一度列車を降りて景色を眺め、また写真を撮ることができます。
  甲府駅前にて。冬場は、このようなイルミネーションが各地で見られるのが嬉しいですね。この写真は一部だけを切り取ったような形になっていますが、駅前にはこのような電飾がズラリと並んでいて圧巻です。芸術的ですよね。1つ1つが芸術で、全体を大きく見てもまた芸術。
  最後の1枚は、甲府駅の駅そば「そば処甲州」の特製甲州そば。ゴチャゴチャしていて何が入っているのか分かりにくいかもしれませんね。12時の方向に温泉卵、2時から5時の方向にきつね、6時から11時の方向にきのこ山菜という布陣です。麺はたっぷり1.5玉。値段は490円と結構張りますが、それでもワンコインなんですよね。いやぁ、駅そばはやっぱりコストパフォーマンスが抜群です。


戻ります。