倉庫35:晴れて自由の西国路ツアー(後編)

  鳥栖からは、東へ戻りながらの旅路になります。小倉に戻ってきた頃には、すっかり陽も暮れていました。電車を降りると、いきなりいい香りが漂ってきました。目の前に「ぷらっとぴっと」。実食済みの店なんですけどね、ふらふら〜っと吸い込まれてしまいました。
  実食は、水巻「ふな津」に続いての丸天そば。でも、写真を見比べるとよく分かるのですが、同じメニューでも店によってだいぶ趣が変わります。水巻の丸天そばは「とにかく丸天が主役」という感じでしたが、こちらはかしわ(鶏肉)がたっぷりと乗り、どちらが主役だか分からない内容になっています。丸天自体も、水巻に比べて若干小さいのでね。
  個人的には、デフォルトでかしわが入る九州の駅そばは大好きです。若干値段が高い傾向はあり、人によっては「かしわ抜きでいいからもっと安くしてくれ」と思うかもしれませんけど。
  九州最後の夜は、城野駅近く(といっても徒歩15分ほど)の健康ランド「バーデンハウス北九州健康センター」に宿泊します。この健康ランドにはナイターサービス制度がありまして、19:30〜20:30の間に入館すると、深夜料込み1575円で翌朝まで居られるのです。シューズロッカーが100円で返却されないタイプなので、それを合わせると1675円。とってもリーズナブルな施設です。全体的に若干古びている印象はありますが、安い上に比較的空いているので、ぐっすり眠れます。昨日泊まった「バーパス」も、値下げしてだいぶリーズナブルになっています(ウェブ上のサービス券使用で深夜料込み1470円)ので、今後小倉近辺で宿泊する場合には、この2軒の健康ランドを使い回す形になると思います。
  翌日は、朝一番で九州を去ります。朝食は、下関駅の駅そば「下関駅弁」で。ここで食べるの、何回目かな。仕事の取材で訪れることが多いのですが、今回も然り。なにしろ名物の「ふく天そば」がお気に入りでして、このネタを使えそうな仕事が入るたびに食べに行っています。
  ホームと改札外にそれぞれ店舗があるのですが、今回は写真を撮りやすい改札外の店舗で。シロサバフグの天ぷらをどかっと豪快に乗せたそばが、470円。こまめに値上げはしているのですが、ワンコインでフグが食べられるというのは、やっぱり記事ネタとしては五つ星です。この写真では分かりにくいですが、サービストッピングのカマボコはフグの形をしています。
  続いて、新下関駅で途中下車。この駅にも「下関駅弁」があるんですね。同じ系列店で連食するのはあまり趣味ではないのですが、下関で「ふく天そば」を食べた際に、「もずくそば新発売」と書かれたポップが出ていたのが気になりまして。
  というわけで、新下関ではもずくそばをオーダーしました。360円は、比較的廉価に感じますね。磯の香りとツルツルした食感が楽しく、「下関駅弁」第3のオススメメニューに推せそうです。ちなみに、第1はいうまでもなくふく天そば、第2はかやくそば(370円)です。
  余談なんですが、新下関駅は在来線と新幹線の接続がある駅です。しかし、乗り換えはお世辞にも便利であるとは言えません。写真のとおり、恐ろしく長い通路を経なければなりません。その間、一部には「動く歩道」があるんですけどね、とにかく永遠に続くのではないかと思えるほど長いんです。
  朝から駅そば3連チャンはなかなか腹に堪えます。3杯目は、厚狭駅「鬼笑亭」の肉そばです。そういえば、以前に宇部駅の同名店で食べた際にも肉そばを選択したなぁ。中国地方では肉そばを扱う店が多く、しかも個人的には麺・つゆとの相性がいいと思っているので、中国地方では選択率が高いように思います。首都圏ではほとんど食べないメニューなのに。
  この店の肉そばも、甘い煮汁がつゆにしみ出して、なかなか美味いですよ。
  今回使った青春18きっぷ。4日目の日付スタンプの右隣、変な位置にスタンプが押してあります。実は、今朝、城野駅で日付を入れてもらったところ、駅員がミスって日付が読めなくなってしまいました。で、隣にもう1つスタンプを押したわけですが、実はこれもミスっています。最後には手書きで日付を修正している(この写真ではそこまで分からないと思いますが)んですけどね、これがまたへたくそな字で読めません。で、駅員曰く「降りるときに、城野駅でこれで大丈夫だと言われたって説明して」と。
  JRさん、改札係には、ちゃんとスタンプを押せる人か、一般人に読める程度の字を書ける人を登用してくださいよ。このおかげで、この後は改札を出入りする都度同じ説明を繰り返さなければならないという面倒なことになってしまいました。 
  一気に大阪まで戻ってきました。定宿「アルデバラン」で一泊しまして、翌朝は大阪市内をぶらぶらと歩きます。天候が優れない(曇り時々雨、といったところ)のが残念ですが、遠目から大阪城を見ることもできました(写真)し、なんとか傘なしでも歩ける程度なので、予定どおりに旅を進めましょう。
  しかし、ここからまたしても私の「雨男」ぶりが発揮されることになります。
  雨ネタの前に、そばネタを2発。1杯目は、京橋駅を東側に出てすぐの「京橋浪花」で、天ぷらそば(310円)。この店、朝からとても賑わっていて、人気の高さが窺えます。確かに、茹で麺使用ながらつゆがまろやかで美味いんですね。
  店内には手狭な立ち食いカウンターしかないのですが、店先に大きなテーブルを出していて、こちらでは落ち着いて食べることができます。人目にはつきますが。
  2杯目は、京阪千林駅前の「大一そば」で、きざみそば。270円といういう安さが武器の店ですね。というか、関西にはこの「きざみそば」というメニューがあるのが羨ましくて仕方ありません。この値段でこれだけボリューム感があるメニューは、首都圏にはあまりないですから。しかも、とろろ昆布のサービストッピング付きです!
  大一そばで食べ終わって外に出てみると、だいぶ雨脚が強まってきていました。本当は門真市駅くらいまで歩こうと思っていたのですが、千林で終了。京阪電車に乗って、京都を目指します。
  京阪電車の車体カラーは、人によっては「ナンセンス」と感じるかもしれない、黄緑です。私個人は、このカラーが大好き。阪急の臙脂色に次いで、全国で2番目に好きな私鉄カラーです。
  終点の出町柳駅までは行かず、途中の祇園四条駅で下車します。ここから、再び歩き始めます。千林では大粒の雨が降っていましたが、祇園四条駅を出た時点では再び小康状態。これなら、なんとか歩けるでしょう。
  最初に向かったのは、祇園四条駅から10分弱のところにある、八坂神社。もっとメジャーなところに行けばいいのに、と思う人もいるかもしれませんが、クリーンナップ観光地は中・高・大学時代に概ね回っておりまして。まだ行ったことがないところをということで、八坂神社です。
  立派な建物ですけどね、思っていたよりも規模が小さかった(敷地が狭かった)のが少々残念に思います。
  続いて、八坂神社のすぐ北東にある知恩院へ向かいます。知恩院は「鶯張りの廊下」が有名な寺。修学旅行で行ったような気もしますが、あまり覚えていないので再訪です。
  ところが、「鶯張りの廊下」は、基本的に非公開なんですね。これだけが楽しみで来たのに……。しかし、本堂の周囲を巡る回廊(写真)も、歩くと「ケキョ ケキョ」と鳴ります。これも鶯張りと言っていいのでは? 床板を支える金属製の鎹がこすれてこのような音が出るのですが、侵入者を撃退するものであることから「忍び返し」とも呼ばれています。
  京都観光はこれまで。全部観ようとするときりがないので、これから京都に来るたびに1、2カ所ずつこまめに塗りつぶしていくことにしましょう。
  蹴上から山科を経て、逢坂山にさしかかります。京都・滋賀の県境ですね。この辺りの国道1号は道幅が広く、バイパス様式で信号もあまりないので、歩行者は道路を渡るのも一苦労です。
  ところが、山科の市街を抜けて追分駅付近まで来ると、国道1号は片道1車線の田舎道に。この変わり様は随分とまた極端ですね。脇を走るのは、京阪京津線。
  この辺りから、またしても雨がだんだん強くなってきました。
  逢坂山の鞍部にある、逢坂山関所跡に到着。ここが京都・滋賀の境界になっているのかと思っていたのですが、県境はもっと西にあり、2枚上の写真撮影地の時点ですでに滋賀県に入っていました。旧東海道を歩くと、四宮駅を越えてすぐに滋賀県に入ります。普通は川とか峠を県境にするものなのですが、京都・滋賀の県境はちょっと変わった設定になっているようです。
  で、逢坂山関所跡ですが、残念ながら何らかの工事が行われていて、詳しく見学できませんでした。
  しかし、ちゃんと関跡の碑だけは押さえてきました。
  ここから先、国道1号は歩道がなくなります(北側。南側にはある)。肩にぶつかりそうなスレスレのところを大型トラックが続けて通過し、おまけに雨が非常に強くなってきて、すっかり戦意喪失しました。本当は石山寺くらいまで歩こうと思っていたのですが、歩くのは大津駅で終了。2時間ほど浮いた時間を、大津駅近くのマクドナルドでボーっと過ごしました。旅先でマックに入り時間を潰すなんて愚の骨頂だとも思えますが、この時には本当に放心状態だったんです。小さな折り畳み傘しか持っていなかったから、ずぶ濡れだったし。
  2時間休んで体力と気力が回復したところで、再び動き始めます。JRで近江八幡へ出て、近江鉄道に乗り換えます。写真は、近江鉄道の近江八幡発八日市行きの車両。なかなか格好いいフォルムですね。近江鉄道、侮れないな……と思いきや、このタイプの車両はこの1編成しか持っていないようですね。本線(米原〜八日市〜貴生川)には、早朝に一部運用されているだけで、基本的には八日市・近江八幡間で運行されているようです。他の車両は、西武鉄道のような黄色い車両か、フジテックの広告が入った赤い車両。黄色および赤の車両はロングシート、写真のイケメン車両は2人掛け×2列の前向きシート車両です。
  近江鉄道に乗るなら、絶対にこの「S・Sフリーきっぷ」がオススメです。土日のみの発売ですが、1日乗り放題で550円。近江八幡から、私がこれから行こうとしている多賀大社前までの普通運賃が820円ですから、片道乗るだけですでにお得になってしまいます。
  このため、近江鉄道各駅の切符売り場(券売機)では、土日には550円以上の区間の切符が発売されません。自動的に、550円で「S・Sフリーきっぷ」を買うことになります。ちなみに、私は近江鉄道を全線乗り、5駅(貴生川・水口城南・米原・愛知川・五個荘)で途中下車しました。この場合、普通運賃の合計は、3150円。つまり、約82%引きですか。恐ろしい威力の切符なのです。沿線には結構名所の類もあるので、この切符1枚で1日楽しめます。単価が安い分、青春18きっぷよりもお得と言えるかもしれません。
  近江八幡駅のコンビニで買ったおにぎり。読みにくいかもしれませんが、「いかなごくぎ煮」のおにぎりです。関東在住の人は、中に何が入っているのか、まったく想像がつかないのではないでしょうか。これは、関西(というか、兵庫県南部や淡路島が中心ですね)でよく食卓に上る、小魚の佃煮です。歯に触る硬い食感と甘い味付けが意外によく合い、ご飯も進みます。こういうローカルおにぎりがあるんですね。旅先では、ちょっとコンビニで弁当を買うとか、キヨスクでお菓子を買うとか、自販機でジュースを買うなんていうときにも、少し幅広く商品を選択していけば、結構旅を実感する機会に恵まれるものです。
  全線乗車を済ませ、いよいよ米原から多賀大社前へ向かうのですが、この時間(21時頃)になるとほとんど利用者がなくなります。沿線は、夜がかなり早いようです。平日なら、勤め帰りのサラリーマンなんかがいるんでしょうけどね。近江鉄道がS・Sフリーキップを売り出すのも分かる気がします。電車は、2〜3人乗っけて走っても満員で走っても、さほど経費は変わりませんから。単価は安くても、少しでも多くの人に乗ってもらった方がいいわけです。
  多賀大社前駅から約15分歩き、名神高速の多賀SA(サービスエリア)へ。このSAは、一般道からでも利用できるのです。もちろん、徒歩で訪れることも可能。SA内の全施設が利用できます。
  たまにはそば以外の食事でも、ということで、24時間営業のレストランでラーメン・カレーセットを。880円。これが駅そばだったら、カレーセットでも600円くらいで済んだなぁ……などとぼやきつつ。
  ラーメンとカレーが食べたくてわざわざSAに来たわけではありません。今日の宿泊地が、ここ多賀SA内にある簡易宿泊施設「レストイン多賀」なのです。いちおう、ちゃんとした客室を備えたホテルなのですが、安く泊まりたい人向けにマット敷きの仮眠室があり、入浴料込み735円で1泊できるのです。10時間の時間制限がありますが、1時間で風呂に入り、ジュースを飲みながら少しまったりして、8時間眠ればちょうど計算が合います。深夜(特に平日)になるとトラックドライバーで混雑しそうですし、かといってあまり早く入りすぎて4時とか5時にチェックアウトしなければならなくなるのも辛いので、22時にチェックイン、8時にチェックアウトという時間帯を選びました。風呂は混んでいましたが、仮眠室は空いていてぐっすり眠れました。ただし、仮眠室には毛布などの設備がないので、特に寒がりな人はそれなりの用意が必要です。また、施設内には食事処がないので、食事は入場前に済ませておきましょう。
  最終日は、写真を2枚だけ乗っけてサクッと終わりましょう。1枚目は、名古屋から。稲沢駅から神領駅まで歩いた中で、パスタデココに寄り、名古屋名物の「あんかけスパゲティ」にチャレンジしました。異様に太い麺、中途半端なジューシーさ加減のソース。個人的には、不味くはないけど、何回もリピートする必要はないかな、という感じでしょうか。
  ちなみに、パスタデココはカレーの「CoCo一番屋」の姉妹チェーン。もう一つ名古屋名物「鉄板ナポリタン」を扱っているので、次回以降、少なくとももう1回は立ち寄る機会があると思います。
  最後はやっぱり駅そばで締めくくります。中津川駅「根の上そば」の天ぷらそば。久々の、関東風のつゆです。そして、久々の白ネギです。なんだか、懐かしい気分です。私は関西風のつゆで食べるそばが大好きですが、長らく関西風を食べ続けて、久しぶりに関東風に戻ると、「やっぱり私は関東人なのだ」と感じます。たまに食べる関西風がすごく美味く感じるのは、たまに食べるからこそなのかもしれません。
  あと、もう一点、関東の駅そばが決定的に関西よりも優れていると感じるのは、天ぷらの質ですね。関西でも本格的な天ぷらを出す店はありますが、平均すると関東の方が圧倒的に美味いです。中津川の天ぷらも、カリッとしていて上々でした。


戻ります。