倉庫48:北斗津軽白一色ツアー(後編)

  後編は、温かい駅そばからスタート。五所川原「でる・そーれ」の、ぼんじゅそばです。駅そばといっても、店は津軽鉄道の駅舎の外。津軽鉄道本社屋の1階を利用した地域交流施設「サン・じゃらっと」内にあります。基本的には喫茶店で、メニューもドリンクやケーキなどが主体。そばメニューはぼんじゅそば1種だけです。
  味覚的には、いわゆる津軽そばですね。コシがなく、ザラザラとした舌触り。面白いのは、エコ箸を入れている箸袋。この地にゆかりがある文豪・太宰治の名作と「箸入れ」をかけて、「はしぃれメロス」と書かれています。
  後編のメイン企画は、ストーブ列車を運行していることで多くの鉄道ファンが訪れる、津軽鉄道。この日も、深い雪の中、多くの観光客が乗りに来ていました。私も、もちろんストーブ列車に乗ります。ちなみに、ストーブ列車に乗るためには、乗車券のほかに「ストーブ券」が必要になります(300円)。
  写真は、津軽五所川原駅舎内の時刻表。漢数字、しかも手書きの時刻表。泣かせますねぇ。
  こちらがストーブ列車の機関車。ちゃんとエンブレムまでついています。ちなみにこの列車は3両編成で、ストーブがあるのは先頭車両のみです。後ろの車両は一般車両になっているので、ストーブ券は必要ありません。また、全便がストーブ車両を併設しているわけではないので、乗りに行くときには時刻表等で確認しましょう。
  ストーブ車両内には、このような石炭ストーブが2基あります。見た目にはあまり暖かくなさそうに見えるかもしれませんが、石炭ストーブは火力が非常に強いです。そばにいると、暑くて暑くてたまらない、というくらい。写真ではストーブの周囲に人の姿がありますが、この人たちもやがて暑くなったのか、途中で席を移動していました。
  ちなみに、ストーブの左下にある青いバケツに入っているのが、燃料となる石炭です。走行中にもたびたび乗務員が石炭を追加補充します。
  車内では物販もあり、土産物やビールなどを購入することができます。その中で一番人気なのが、スルメ。買って、すぐにストーブで炙ってその場で食べられるんですね。網の上に乗せた途端に、スルメがちりちりと丸まっていきます。ほんの30秒炙るだけで食べ頃に。火力の強さがよく分かります。
  車両内全景。ガランとして見えますが、これは大半の乗客が降りる金木駅に到着した時に撮影したため。津軽五所川原・金木間はなかなか賑わっていました。アテンダントさんも添乗して、津軽弁丸出しで観光案内などをしてくれます。乗客が多いときにはアテンダントさんもなかなか全員の相手をすることが難しいので、集中的に話をしたいなら金木・津軽中里間を乗るのがオススメです。
  私も、金木駅で降りました。駅舎の2階に軽食堂「ぽっぽ家」があったので、早速天そばを注文します。出てきたそばには、かわいいエビ天が一尾。
  麺は、やっぱり津軽そばでした。ちなみにこの店もいわゆる「駅そば」という感じではありません。ラーメンからご飯ものまで、手広く扱っています。その中で一番の名物になっているのは、十三湖(近くにある湖)特産のシジミを使ったしじみラーメンです。
  単純に列車に乗って五所川原へ戻ったのでは面白くないので、復路は少し歩きます。相変わらず風雪が強く、道路も概ね凍っていましたが、まぁ時間がたっぷりあったので。
  この辺りの道路には、写真のような「防雪壁」が多く見られます。これがあるとないとでは、道路の積雪状況がおおいに違います。歩いているときにも、防雪壁があるところではとりあえず横殴りの雪は遮られるので、たいへんありがたいです。
  金木駅のお隣、嘉瀬駅付近にて。ボロボロの鉄道車両に、いろいろなペイントが施されています。よく見ると、先頭のドアの部分に「しんご」という文字があるのが分かります。なんと、これは某ジャニーズ系アイドルユニットの、あの「しんご」なのだそうです。テレビ番組のロケでこの地を訪れ、地元の子ども達と一緒にペイントしたのだそうです(ストーブ列車のアテンダント談)。
  防雪壁がなく、しかもあまり車が通らないような道は、ご覧のとおり。ほとんど、ここに道があることすら分かりません。足を踏み入れると、ところによっては太股までズッポリと埋まります。地図で見る限り、この道を行かないとたいへんな遠回りになりそうだったので、決死の覚悟で歩ききりました。写真では分かりませんが、この道のすぐ先に五農校前駅があります。地図で見てそれが分かっていたので、ついつい足を踏み入れてしまいましたが、今にして思えば迂回するべきでした。靴の中どころか、ズボンの股下全体が凍りついてしまい、凍傷になるのではないかと不安になりました。
  もちろん、五農校前駅で歩くのはやめました。戦意喪失です。津軽五所川原まであと2駅だったのですが、もう脚の感覚が……。幸いにも五農校前駅が駅舎のある駅(もちろん暖房などありませんが)だったので、休んでいるうちに少し落ち着きました。
  帰りの列車もストーブ列車を併結していましたが、たった2駅のためにストーブ券を買うのはアホらしいので、普通車両に乗ります。これはこれでローカル列車の雰囲気があって良かったですね。観光客皆無だし。天井には、雪を象った飾りつけが施されていました。
  五所川原経由で弘前に着く頃には、すっかり暗くなっていました。さて、今日これから宿に入る前にやっておかなければならないことは、洗濯です。本当は昨日、函館でコインランドリーに寄るつもりでいました。しかし、心当たりのあるコインランドリーに行ってみたところ「だいぶ前に閉店した」とのことで、時間の関係で他を探すこともできずにいました。弘前でも心当たりのあるコインランドリーがあるので、そこへ向かいつつ、他のランドリーが首尾良く見つかれば臨機応変に対応、という案配。写真は、弘前市の中心部にある昇天教会。ライトアップされると、なかなか幻想的な姿になります。
  中央弘前駅に立ち寄り、駅舎内の駅そばで1杯。やっぱり、ザラザラ食感の津軽そばでした。青森県内、特に西部ではこの麺を出す店が多いですね。ちなみに、メニューは天ぷらそばなのですが、これはちょっと選択を誤りました。具ナシで、すぐに溶けて「たぬきそば」になってしまいました。しかも、刻み海苔の香りが強くて、出汁の香りがあまりよく分からなくなってしまいます。「迷ったときにはとりあえず天ぷらそば」が無難だと思っていましたが、ちょっと考えを改める必要がありそうです。
  弘南鉄道大鰐線に乗って、弘前学院大前駅へ。駅前にコインランドリー「にしひろ」があるということを知っていましたので(というか、過去に利用経験アリ)。でも、このランドリーもそろそろ危ないかも。3台ある洗濯機のうち2台が故障中。先客がいなかったのが幸いでしたが、次回の需要まで持ちこたえてくれるかどうか、心配です。
  洗濯中に、ランドリーのすぐ近くに弁当屋があるのを見つけたので、買って食べることに。この店、ボリュームがすごいです。テレビでもよく紹介されているらしい(貼り紙アリ)のですが、なるほどと思うくらいの圧巻の量。特にご飯が多い多い。大食漢の方、お試しあれ。
  無事に洗濯を終え、宿に入ります。今日の宿は、弘前市の歓楽街のど真ん中にあるカプセルホテル「カプセルイン弘前」。娯楽施設がいろいろ入っているビルの、5階部分がカプセルホテルになっています。階下がボーリング場で音がうるさいとのクチコミを得ていましたが、さほど気にはなりませんでした。まぁ、シンプルなカプセルホテルです。寝るだけなら特に不満はありません。なお、カプセルルームを利用せず休憩室で寝るのなら、1500円で泊まれます(カプセルは2980円)。館内着とタオルをつけても2000円。これは安宿としての利用価値が高いかも。
  翌12月27日は、ひたすら移動する日。次々に列車を乗り継ぎ、弘前から長岡まで一気に移動します。その途中、酒田で列車のダイヤ乱れのため長い待ち時間が発生。とりあえず駅そばで腹を満たすことにしました。2度目の実食となる店で、肉そばを。肉の数が少ないようにも見えますが、1枚1枚が厚切りなので、食べ応えがあります。地方で、この内容で380円なら合格点でしょう。
  長岡では、(私にしては)豪勢な夜を過ごします。な、なんと、旅館をとってしまいました。3500円の安宿なんですけどね(汗)
  でも、エアコンあり、テレビあり、お茶セットから浴衣もあって、そしてなによりフカフカの布団で寝られました。これだけで、たいへん満足です。よく考えてみたら、3500円という健康ランドやカプセルとあまり変わらない値段で8畳間を占有できるのですから、お得です。風呂が家庭風呂だったのが少々辛かったですが、それ以外はまったく不満なし。今後も、こういう安宿はうまく使っていこうと思います。
  最終日。仕事の関係があって、ここから少し寄り道をします。まずは、六日町駅で北越急行に乗り換えて十日町へ。北越急行はJRではないのですが、北東パスで乗車することができます。う〜む、なんてありがたい切符なんだ!
  十日町での一杯は、お馴染み「雪中庵」の山菜そば。この店で食べるのは4回目ですが、相変わらず美味いですねぇ。天かすの無料サービスも嬉しいところです。
  十日町でJR飯山線に乗り換えて、津南へ。以前に「津南駅にも駅そばがある」との情報が寄せられ、それを受けての実地調査に立ち寄ったのですが、残念ながら……。いや、あったことはあったのですが、なんと定休日でした。「駅そば」として括るには本格的すぎるようにも思いますが、一応駅舎内に「かねさま蕎麦」がありました。NPO法人が運営しているようです。詳細については、次回訪問時に。
  で、今回は駅舎の2階にある日帰り温泉だけ利用してきました。駅舎内の温泉、さほど珍しくもなくなってきてはいますが、やっぱり独特な情緒があります。ちなみに、入浴料は500円。休憩室完備です。
  最後に駅そばを2連発。まずは、長野駅「裾花郷」のきのこそば。傘を広げて、綺麗に盛りつけているのが印象的な一杯です。使っているきのこが山なめこだけであるため若干質素なルックスになっていますが、麺・つゆ・そしてきのこの相性は抜群でした。ネギが邪魔に感じるくらいです。
  続いて、篠ノ井駅「TASTY KIOSK」の野沢菜わさび昆布そば。長野県内の駅そばではよく目にするメニューです。昆布の独特なぬめりと野沢菜のシャキシャキ感とわさびのツンとくる香りが不思議なハーモニーを奏でます。これもまた見た目の豪華さはないのですが、味覚的には私好みでした。やっぱり、ネギが邪魔に感じるメニューです。
  今回の旅はひたすら雪雪雪だったわけですが、それは最後の最後まで続きました。駅前調査のため最後に途中下車した長坂駅でも、大雪でした。駅前に学習塾があり、子ども達は講義そっちのけではしゃいでいましたが、私にとってはもうウンザリ。3年分くらい雪を見たなぁ、という気分。でもたぶん、また春、夏、そして秋を経て冬がやってきたら、雪を見に行きたくなるんだろうなぁ。過去の経験上、まず間違いないでしょう。


戻ります。