倉庫49:新春浪速双山浪漫ツアー

  今回の旅は、大阪行きの夜行バス「青春中央エコドリーム号」で始まります。東京・大阪間の夜行バスは選択肢が実に多く、便利です。ファーストクラス感覚のリッチなバスから格安バスまで、ランクもいろいろ。往路のバスは片道3920円の格安バス。便名のとおり、中央自動車道を走って西へ向かいます。写真は、道中休憩に立ち寄った境川PA。便によって休憩箇所も異なるんですね。中央道経由の夜行バスには何度か乗っていますが、境川PAに寄ったのはこれが初めて。SA・PA巡りも、夜行バスの楽しみになりうるかも。
  大阪に到着したら、早速朝食です。中津駅近くの「都そば」で、きざみそばを。大阪に来たら、一度は注文しないと落ち着かないメニューです。関東ではほとんど食べることができませんので。ふわふわした食感と、つゆを吸ってジューシーな味わい。同じ油揚げでも、味付きの「きつね」とはまったく別のメニューですね。
  阪急の淡路駅付近にて。平成20年に久宝寺〜放出間が開通した、JRおおさか東線の延長路線の工事が進められています。右の地平を走っているのが阪急で、その上を跨いでいるのがJRおおさか東線。見てのとおり、線路はまだ寸断されています。この先、平成30年に新大阪経由で北梅田まで延伸する計画。ただ、この場所に限って言うと、線路は新大阪とはずいぶん離れた方角へ伸びているように見えます。距離的に、かなりロスをしていると思われます。
  さて、申し遅れましたが、今回の旅の主旨を。夜行バスで大阪に乗り込み、そのまま歩いて生駒山を登り、一泊。翌朝は宿からひたすら歩いて高安山を登り、すぐに夜行バスでとんぼ返り。つまり、2日間で2つの山を登るだけでなく、麓までの道のりもずっと歩いていく、というのがテーマです。バカみたいな企画ですけどね、バカが企てるにはもってこいな話でしょう?
  写真は、淀川に架かる太子橋。淀川に架かる橋は、どれも桁が低いですね。大型船舶は一切淀川を遡上しないということが前提になっているようです。東京では隅田川に近いイメージですが、淀の方が断然川幅が広いです。
  本日の2杯目は、京阪と大阪モノレールの乗換駅、門真市駅前にある「カワバタ」の山菜そば。この店、米屋が営む立ちそば店という、ちょっと変わった店です。元気なおばちゃんが、一人でそば屋と米屋を両方切り盛りしています。
  そば自体は極めて簡素な作りなんですけどね、スッキリしているつゆがたいへん美味しゅうございました。
  門真市駅から南へずっと歩いていくと、なみはやドームが見えてきます。こんな郊外にあったんですね。もっと、大阪の中心部にあるのかと思っていたのですが。でも、これで地下鉄長堀鶴見緑地線が門真南駅で終わっていることに納得ができました。いや、ずいぶんと中途半端なところで終点になっているなぁと思っていたんです。他路線との接続はないし、大規模なニュータウンが開けているわけでもないし。というか、住宅はかなり少ない地域なんです。なみはやドームがあるからこそ、ここまで路線を延ばしたのでしょう。路線全通はなみはやドーム開業の翌年だし。
  昼食は、JR鴻池新田駅前の、その名も「駅前」で。早くも、本日3杯目の駅そばでございます。いろいろなトッピングが乗っていますが、メニュー名は「かやくそば」。確認できた具材は、卵焼き。鶏肉、椎茸煮、薩摩揚げ、カマボコ、ナルト、南蛮ネギ。つゆの量が多く、具材が散乱してしまっているので見栄えはあまりよくない(つゆを少し減らせば、具材を綺麗に盛りつけることができそうに思います)のですが、食べるとこれがクセになる美味さでした。特に、鶏の出汁がよく出ているつゆが絶品! 480円と、結構な値段なんですけどね、絶対に値段以上の価値があると思います。
  鴻池新田駅を出ると、徐々に前方に山並みが迫ってきます。大阪府と奈良県の境界になっている、生駒山地です。今日のゴールは、生駒山脈の北側のてっぺん、生駒山。高さは、標高642m。高尾山(599m)よりも少し高いくらいですね。そう考えればたいした山ではないのですが、なにしろ大阪駅からここまでずっと歩いてきているわけで。そりゃそれなりに疲れてます。それに、ここにきてちょっと天候が怪しくなってきたのが気がかり。写真を見ても分かるように、ちょうど生駒山地の上空あたりを黒い雲が覆っています。
  近鉄の新石切駅あたりから、すでに生駒山地の山麓に入ってきます。まだまだ周辺は住宅地なのですが、結構な急坂が続きます。そして、振り返ればすでに大阪平野が絶景となって広がっていました。遠くに霞んで見える高層ビル群が、大阪駅あたり。あそこからここまで、ずっと歩いてきたんですねぇ。我ながら、バカですねぇ。
  生駒山の登山ルートはいくつかあるのですが、私は枚岡公園を抜けて、額田山を経由するルートを歩くことにしました。写真は、途中の額田山展望台からの眺め。いやぁ、これはすごい。こういう景色が眺められる場所って、東京にはなかなかないですね。こうして眺めていると、大阪平野って意外に狭いんだなと思います。
  登山道は、こんな感じ。公園を抜けるルートだから利用者が多いのでしょうか、わりとよく整備されています。とりわけ難所と言えるような場所もないので、初心者向けのコースです。分岐点には道標が立っているので、地図なしでも大丈夫。
  とはいえ、標高642mというのは結構高いんですね。山頂付近には、うっすらと雪が積もっていました。
  山頂に到着! 一等三角点を探し出し、生駒山完全制覇です。
  生駒山の一等三角点がどこにあるかというと、こんな場所です。遊園地の、とある乗り物の敷地内にあります。したがって、写真を撮ることはできても、三角点の上に立つことはできません。汗かいて登ってきた山の上に遊園地があるというのも、ちょっと興醒めですね。生駒山頂へは車で上がることもできますし、ケーブルカーも通じています。結構多くの人が遊びに来るスポットなのでしょう。ちなみに、生駒山頂には遊園地の他に各種通信施設がたくさんあります。遊園地の背後に見えている紅白の鉄塔がその一部。
  遊園地は冬季休業中でしたが、職員が各施設の点検に勤しんでいました。寒い中、お疲れさまです。
  休業中ということで行楽客の姿もまばらだったのですが、それでもポツポツといました。私と同じようにお手軽なハイキングを楽しんでいる人、ケーブルカーに乗るのが目的の人、単純にドライブで来ている人、などなど。
  山頂からの眺めは、こんな感じ。これは、奈良側の眺め。空気が澄んでいれば奈良市街なで望めそうな感じですが、残念ながらガスっていました。でも、足下の生駒市街を望むだけでもなかなかの眺望です。
  こちら、大阪側。すでにだいぶ日が翳っていたうえ、黒い雲が辺りを覆っていたので、ちょっと妖しげな雰囲気になってしまいましたが。ここまで登ると、個々の建物はあまり見えません。そういう意味では、額田山からの眺めの方がオススメです。でも、吹き抜ける風の爽やかさは山頂ならではのものがあります。汗が急に冷やされて、ちょっと寒かったですが。ま、とりあえず雨が降らなくてよかったですね。
  下りは、生駒ケーブルで。大阪側には降りられないので、奈良(生駒)側に降ります。山頂に遊園地があるためでしょうか、ケーブルカーもハデハデ。バースデーケーキのようにデコレートされています。大のオトナが単身この車両に乗り込むのは、ちょっと恥ずかしいものがあります。それ以前に、こうして写真を撮ることが恥ずかしい…。ちなみに乗客は、私を含めて2人だけでした。
  なにしろ急勾配です。途中にある駅は、いずれもホームが階段状になっています。車内フロアも、階段状。
  というか、こんなところに駅があって、利用者はいるんでしょうかね。ケーブルカーに途中駅があるというのも、ちょっと違和感があります。ケーブルカーは常に対向車と連動しているわけで、下りの車両が駅に停車すれば、自動的に上り車両も停車する仕組みです。うまく位置を合わせて駅を設置しているのでしょう。
  生駒ケーブルのもうひとつの特徴が、こちら。踏切があるんですね。しかも、車が通れる踏切です。生駒ケーブルは、生駒山上〜宝山寺、宝山寺〜鳥居前(生駒駅前)と二段式になっていて、生駒山上から鳥居前まで降りるためには、宝山寺で乗り換える必要があります。そして、宝山寺〜鳥居前の路線は、結構な街なかを走っています。おそらく、生駒市が近年急速に発展して市街地が山麓の方まで広がったのでしょう。路線中には、踏切が全部で5つあります。また、宝山寺・鳥居前間は複線で、しかも写真の辺りでは複々線になっています(写真でも、なんとか分かるでしょう)。複々線のケーブルカーは、全国唯一なのだそうです。
  生駒へ降りたところで、本日4杯目の駅そばを。南口向かいの「う丼や」で、天ぷらそばをいただきます。例によって、具材の少ないインスタント天ぷらですね。
  インスタントといえば聞こえが悪いですが、実は私はこれが結構好きだったりします。なにしろ普段たぬきそばを食べ慣れている人間なので、「衣の塊」に親しみがあるのでしょう。これもまた、きざみそばと並んで「関西に行ったら一度は食べたいメニュー」です。
  心斎橋に戻って、定宿「アルデバラン」で一泊。どうせまた明日生駒山地まで歩くのだから、もっと近い場所で宿泊すればいいのに、とも思うのですが、もともと歩くために来ているのですから。わざと大阪の中心部に宿をとりました。1泊2200円で、カプセルとはいえプライベートスペースを確保できるので、重宝しているんです。ちなみにこのホテル、ネット(楽天)で予約すると、1900円で泊まれる枠があります。なかなかの競争率ですが。
  腹が減っては戦はできぬということで、朝食タイム。恵美須町駅近くの堺筋沿いで「阪急そば」を見つけたので、天ぷらそばを。「阪急」に入ると、とりあえず天ぷら系のメニューを注文したくなります。なぜかというと、大きくて水滴型をしているこの天ぷらが、なんともいえず関西らしくて好きなのです。具材は小エビだけなんですけどね。
  1杯だけでは足りなかったので、続いて寺田町駅前の「駅前うどん」で、月見そばを。とろろ昆布がサービストッピングされるので、ちょっとだけ豪華。これで270円は安いです。
  さらに駅そばネタが続くのですが、今度は近鉄八尾駅駅舎1階にある「河内うどん」のわかめそば。わかめたっぷり、ヘルシーなメニューです。ちなみにお値段、290円。関西は全体的に安いですね。
  ふと気づけば、生駒山地が眼前に迫っていました。キタのい繁華街から生駒山方面へ行くよりも、ミナミの繁華街から高安山方面へ行く方が早いようですね。昨日よりもずいぶん楽に麓まで辿り着けたように感じます。もっとも、昨日はおおさか東線の建設現場を見たくて淡路まで迂回しているので、距離的なロスが多かったということもあるのですが。
  近鉄大阪線の恩智駅を越えて東へ進むと、いよいよ慢性的な上り坂になります。この辺りには古い街並みが残っていて、しっとりとした情緒が漂っています。蔵造りの古い民家がたくさん残っています。道路を跨ぐ恩智神社の鳥居もまた荘厳。
  鳥居を潜ってそのまままっすぐ進むと、やがて道路の舗装が途切れます。ここから、登山道の始まり。登山道の入口は産廃系の集積所というか、それを扱う会社の庭先のようなところを抜けていくので、「本当にこっちで良いのかな?」と心配になりますが、大丈夫。
  こんな看板が出ていました。神戸の六甲山でもイノシシがよく出るらしいですが、生駒山地でも出るんですね。気をつけましょう。
  登山道の雰囲気は昨日の生駒山と似たような感じだったので、割愛。1時間ほどかけて、展望台に到着したところから中継を再開します。
  展望台からの眺めは、やはり昨日の生駒山地と同じく大阪平野を一望するものなのですが、生駒山に比べて背の高いビルがあまり見えないですね。大阪は、キタの方に高層ビルが集まっていて、ミナミにはあまり高い建物がないのでしょうか。通天閣も、そんなに高くはないし。
  両線の反対側(奈良側)には、一面の墓地が広がっています(高安山霊園、信貴山霊園)。墓石が整然と並んでいて、区画も綺麗に区切られていて、なんだかマチュピチュのような雰囲気。遠い未来には、この場所は「古代遺跡」として未来人の間で観光名所になるような気がします。
  展望台から稜線上を北へ縦走していくと、近鉄西信貴ケーブルの高安山駅があります。帰りはこのケーブルで降りるわけですが、まだやり残したことがあるのでお預けです。
  やり残したことというのは、高安山の本当の頂上、すなわち三角点を探し出すこと。高安山駅からさらに北へ縦走していくと、小さな目印が出ていました。分かりますか? 木に巻き付けられた青・黄・赤のテープ、そして隣の木に貼りつけられた小さな白いビニールテープ。これが、山頂へ続く踏跡入口の目印になっています。ビニールテープには「←高安山へ」と書かれています。稜線縦走ラインは山頂を通っていないので、この目印を見落とすといつまでも山頂には到達できません。私も、この目印に気づくまでにこの場所を2往復しました。もうちょっと目立つ目印がほしかった……。
  踏跡とは名ばかりで、普段はほとんど誰も通らないのではないかというような道。生い茂る笹をかき分けて進み、ようやく山頂に到着。ちなみに、山頂からはまったく景色が見えません。木々の枝葉が四方八方の視界を遮っています。ま、到達ポイントですね。487mですから、昨日登った生駒山よりもだいぶ低いです。
  これが、山頂の証。山を上るときには這ってでも探し出したい、三角点です。高安山もそうですが、展望台がある場所が山頂であるとは限りません。山によっては、三角点が大変分かりにくい場所にあり、探すのに骨が折れることもあるのですが、これを探すのもRPGみたいで楽しいですよ。
  本懐を遂げたところで、ケーブルカーに乗ります。西信貴ケーブルも生駒ケーブルと同様に、車内フロアは階段状になっています。高安山駅から信貴山口駅まで、途中駅はなくノンストップです。
  途中で、対向車とすれ違います。オトナになっても、思わず童心に返って、対向車の人々に手を振ってしまいます。シカトされると虚しいんだ、これが。
  信貴山口駅に到着。車両のデコレーションは、生駒ケーブルに比べるとだいぶおとなしいですね。高安山には、山上の遊園地がありませんのでね。むしろ、墓地にお参りに来る人が多く利用するケーブルなので、さすがにデコデコにするわけにはいかないのでしょう。これでもまだハデな方だと思いますが。
  最後に一杯。近鉄大阪線と信貴線の乗換駅・河内山本駅を出てすぐ、「てんまや」のスタミナそばです。関西では、「スタミナ」は関東の「天玉」を指します。一般的には。
  「阪急」ばりの水滴型天ぷら、なかなか美味しゅうございました。これぞB級グルメ、という味わいです。
  近鉄とJRを乗り継いで天王寺へ。ここから、夜行バスで一気に東京に帰ります。あっという間に終わってしまった大阪滞在でした。大阪は、中心部から山地までの距離が近いので、手軽にハイキングが楽しめて良いですね。今後も、大阪を訪問する機会は山ほどあると思いますので、うまく時間を作ってお気軽ハイキングを挿入していけたらいいなぁ、と思っています。生駒山地には、未踏の山がまだまだたくさんありますので。


戻ります。